NHK問題「独立と中立」

門奈 直樹立教大学教授の提案を紹介します
自民党の安倍晋三議委員は「放送の公平中立」としばしば発言しますが、「独立」とは決して言いません。イギリスのマスメディアのあり方と比較して考えてみましょう。

「イギリスではBBCも他の民放も、詳細な「放送ガイドライン」を作り 市民に公表しています。番組を商品と考えれば、商品には効能書や説明書があ るように、「放送ガイドライン」はBBCの番組制作の姿勢を視聴者に示し、 その上で番組を見てもらう説明書の意味合いがあります。さらにBBCも他の 民放も政府の介入があれば、「ガイドライン」を武器にして闘います。
 アフガンやイラクで戦争が起こると、そのつどBBCは戦争報道ガイドライ ンを作り、公開しました。企業の社会的責任として、視聴者に番組制作方針を 公開したうえで、視聴してもらいます。
 NHKにも「ガイドライン」はありますが、倫理規定の性格で内容も非公開です。  日本の放送法では「公正・中立」といいますが、イギリスの原則は、中立 (ニュートラル)ではなく、公平(インパーシャリティ)、公正(フェアネス) です。「インパーシャリティ」は偏らず多様な視点を提示することです。
 イギリスでは1930年代から新聞界でも「中立」とは言わず、「インディ ペンデント」(独立)が原則とされてきました。「中立」は左右の真ん中とい う意味で、左右の極がどちらかに触れれば、真ん中も移動します。イギリスで は放送番組はバランス感覚をもって制作されなければならないとされています。
 その場合、一つの番組の中でバランスをとるのではなく、編成全体の中で多 様な意見を提示していくのが、「公平」であり「公正」です。
 イラク戦争報道では、BBCもエンベッド方式の従軍記者を送り込みました。 しかし、それ以上の数の非従軍記者を派遣しました。
 日本のマスコミでは従軍記者は社員で、戦場などの現場取材はフリーに任せ ました。BBCでもフリーの記者を使いますが、正社員と同じ条件で扱われな ければならないと決められています。あまりにも日本はフリー記者を劣悪な条 件で使いすぎます。
 イギリスのブレア政権のイラク戦争情報操作疑惑を報じて、問題となった 「ギリガン事件」に抗議して辞任したダイクBBC会長は、もともとブレア首 相の盟友でした。
 BBC会長になってからの彼はブレア政権からの戦争肯定のイラク報道要求 をつき返しています。
 この「ギリガン事件」を好機として捉え、BBCを攻撃しているのが『サン』 や『タイムズ』など、ルパート・マードック傘下のメディアです。マードック はBBCの民営化を狙っています。BBCの国際的な放送網がほしいのです。
 「NHK民営化論」は市場の論理から出ています。イギリスでは商業放送で も、企業が個々の番組を丸ごと提供することはできません。スポットCMしか 認められていません。そうした事実も考慮されなければなりません。
 今回の問題を機にNHK民営化論が強まるのは危険です。またNHKは社会 的責任として情報公開すべきです。そして市民的立場でのフォーラムを立ちあ げ、NHKのあり方を根本から討議する必要があります」(立教大学教授)
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by daisukepro | 2005-03-09 08:16 | 憲法


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