安全安心まちづくり都条例改悪で繁華街は不安で夜も眠れない!

安全安心まちづくり都条例改悪で繁華街は不安で夜も眠れない!


明日、3月17日、東京都議会で総務委員会がひらかれる。そこで、安全安心まちずくり条令の改正案が審議され、翌日、18日には委員会を多数決で通過する見込みである。c0013092_13203424.jpg27日の都議会で採決される。たった3日のスピード審議である。なぜ急ぐのか。この条例は2003年春に制定されたものだ。今回の改正にあたって東京都は有識者会議を開いた。そこで審議された内容が報告書にまとめられ告知されたのは2月10日、18日の第1回都議会定例会議で改正案が提案された。改正のポイントは繁華街の安全安心の確保を規定した第6章18条の2項、3項、4項である。
警察関係者によれば、「今後、失業者の増加が予想される。(条例改正は)治安の確保のために急ぐ必要がある」という。c0013092_13211693.jpg閉塞感を爆発させる秋葉事件のようなケースを未然に防ぐための措置だという話もある。
では、条例の改正案を見てみよう。その第6章18条は下記のように書かれている。


第6章 繁華街等における安全・安心の確保等

第18条の2(繁華街等における安全・安心の確保)
繁華街その他の店舗が集積し、多数の来訪者を抱える地域において、店舗、駐車場その他の施設若しくは土地を所有し、若しくは管理する者又は事業を営む者、地域住民、ボランティア及び来訪者(以下「事業者等」という。)は、次条に規定する繁華街等に関する指針に基づき、当該繁華街等の安全・安心を確保するために必要な措置を講ずるように努めるものとする。(アンダーラインは同好会)

要約すると「繁華街にかかわるすべての者は繁華街の安全を確保するために必要な措置を講ぜよ」ということである。この条令では繁華街は繁華街関係者と来訪者で構成される。安心安全を乱す可能性のあるのは主として来訪者という想定である。文脈から治安を任務とする行政官の作文であることがすぐにわかる。けれども条例の主語は繁華街関係者である。行政官が市民の自発性を利用して治安の目的を達しようとする条例の狙いが見えてくる。さて、繁華街関係者が来訪者に対して講ずる必要な措置とはどのような措置なのか。その指針は次条に規定してあると書いてあるので3項を読んでみよう。

第18条の3(繁華街等に関する指針の策定)
知事及び公安委員会は、共同して、繁華街等における安全・安心の確保に関する指針を定めるものとする。
指針は都知事と公安委員会が(勝手に)決めることを規定している。

不思議なことに条例が出来上がる前からすでに指針は出来上がっている。この規定では公安委員会がいつでも指針を変更も追加も出来ることになる。そのような恐ろしい指針は以下のように定めている。繁華街関係者が講ずる措置はこの指針に基づかなければならない。世間で言えばこの指針の指揮命令に従う措置であり、知事と公安員会の指揮命令に従う措置を講じることが規定されているのだ。

2 基本的な考え方

第1 通則
1 目的
この考え方は、昼夜を問わず安全・安心な繁華街等を形成するために必要な方策を示すことにより、繁華街等における安全・安心を確保することを目的とする

(1)繁華街等における安全・安心の確保は、行政・警察の基本的責務であるが、繁華街等において、店舗、駐車場その他の施設若しくは土地を所有し、若しくは管理する者又は事業を営む者(以下単に「事業者」という。)、地域住民及びボランティアが自主的な取組を推進することで、より安全・安心な繁華街等を形成するとともに、街の活性化にも資する。
(2)繁華街等において店舗、駐車場その他の施設又は土地を所有しているが、繁華街における地域の取組に直接関与していない者も、この考え方の対象となる。
(3)来訪者もこの考え方に基づいて、繁華街等の安全・安心の確保に寄与するように努めるものとする。
(4)この考え方に基づく対策は、防災対策、福祉のまちづくり、活性化対策等まちづくり全般を視野に入れて行うものとする。
(5)この考え方は、関係法令等を踏まえ、繁華街等における犯罪発生状況等、繁華街等の実状に応じて運用するものとする。
(6)この考え方は、社会状況の変化、技術の進展等を踏まえ、必要に応じて見直すものとする。

指針の目的は繁華街の安全安心の確保であることを規定している。しかし、治安確保は警察、行政の責務であることを前提に繁華街関係者は自主的に治安維持に取り組めと規定している。矛盾している主張だが、警察の治安維持に繁華街関係者や(善良な)訪問者(市民)は協力せよということを持って回ってこの条令の心は主張しているのだ。だから、この条令はどこか日本語として変なのである。一般人は確保という言葉を使うことはあまりない。
元は軍隊用語で「陣地を確保」などとして使われるが、警察用語では「犯人確保」などとよく使われる。安全確保とは言うが、安心を確保したとは言わない。安全と安心を一緒にすると治安という。治安確保と表現すればいいのに、なぜ持って回って安全安心などというのだろう。この条例の本質が治安維持を目的としていることをオブラートに包むから奇妙な言い回しになるのだ。もうお分かりのことと思うがこの条令は治安維持条令なのである。
しかし、この条例はさらに一歩踏み込んでいる。戦前基本的人権を蹂躙した治安維持法はお互いに隣を監視し合う隣組組織を基礎にして威力を発揮した。この条例は治安確保のための組織の設置を提起している。それが推進協議会である。しかも官民一体の組織なのだ。以下を読んでみてください。




第2 推進協議会
1 推進協議会の設置
繁華街等の安全・安心を確保する対策を推進するため、事業者、地域住民、ボランティア、区市町村、管轄警察署その他の関係行政機関などにより構成される協議会(以下、「推進協議会」という。)を設置するものとする。
なお、同趣旨の協議会等が既に存在する場合は、これを活用することができるものとする。

まず、条例はこの組織が警察と行政機関と繁華街関係者で構成される官民一体の組織であることを規定している。繁華街関係者の自発的組織ではないのである。しかも、知事と公安委員会の指揮命令に基ずく組織なのだ。もちろん不特定多数の訪問者は含まれない。取り締まり対象者なのだから当然のことだ。
では、この組織が何をやるのか、役割は何か。先に進もう。

2 推進協議会の役割
(1) 本考え方に基づく対策の対象とする繁華街等の区域を定めるとともに、安全・安心な繁華街等の形成に向けた行動目標及び具体的な活動計画を策定の上、各種活動を推進するものとする。

まず、組織の縄張りを決めようと言うのだ。構成メンバーを見れば所轄警察署の区域に準ずることは明らかだ、そう書いてないだけである。そして、組織(推進協議会)は指針(公安委員会の指揮命令)に基ずく行動、活動計画を策定して各種活動(治安維持活動)を推進するのだ。各種活動とは何か、次のように具体的に規定されている。



(2)活動計画には、繁華街等の地域特性に応じて、次のような事項を規定するものとする。

ア 自主防犯パトロールの実施及び必要な資器材の整備に関すること。

イ 安全・安心な繁華街等の形成に資する研修会その他のイベントの企画及び開催に関すること。

ウ 犯罪の防止に配慮した環境整備に関すること

エ ゴミ・タバコのポイ捨て、歩行喫煙の禁止等ルールやマナーの遵守に係わる啓発活動に関すること。

オ 放置自転車・自動二輪車や違法看板の撤去、路上清掃、落書き消去等の環境美化活動に関すること。

カ 街頭や歩行者天国において大衆に多大な迷惑となるパフォーマンス等、街の秩序を乱す行為の防止に係わる啓発活動に関すること。

キ 外国人の不法就労防止に係わる啓発活動に関すること。

ク 人に不安感や嫌悪感を抱かせるような客引き行為や客待ち行為等の自粛に係わる啓発活動に関すること。

ケ みかじめ料の不払い運動、暴力団追放キャンペーン等環境浄化に係わる啓発活動に関すること。

コ 事件・事故発生時における対応マニュアルの作成及び訓練並びに必要な装置、器具に関すること。

ここに規定されている事項が示すイメージを想像していただくとして、啓発活動とはどんな活動か考えてみよう。辞書を引くと啓発=「人が気づかずにいるところを教え示して、より高い認識・理解に導くこと」とでている。
タバコのポイ捨てする人(訪問者)に推進協議会員がポイ捨てはマナーに反する行為であり、自ら認識を深め以後ポイ捨てはやらないように啓発する活動ということになるが、実際はどうか。条例の指針に「反する行為だからやめろ」と注意するだけである。啓発は実際には警告になり、警告に従わなかったり、反抗的態度や言辞を弄すれば警察に連絡、駆けつけた警官が再び警告、従わなければ条例違反として公務執行妨害で拘束する根拠があることになる。
パフォーマンス等はいかなる行為を規定しているか曖昧だが、それが大衆に多大な迷惑をかけていると誰が判断するのか、街頭署名活動や労働組合の社前抗議行動、市民運動の宣伝活動など取り締まりの根拠が指針(公安委員会が決める)となれば無限に広がりかねない。憲法の基本的人権、表現の自由に関わる問題でもあるので慎重に議論する必要があるのではないか。条令という名目で知事や公安委員会に白紙で判断をゆだねていい問題であるかどうか深い疑念がある。法律家はどう考えているのだろうか。
最後の4項は行政(公安員会)や警察署長が繁華街関係者(推進協議会)に情報提供することを定めたものだ。以下を見てみよう。


第18条の4(事業者等に対する情報の提供等)
① 都は、繁華街等における事業者等に対し、繁華街等の安全・安心を確保するために必要な情報の提供、技術的助言その他必要な措置を講ずるものとする。
警察署長は、その管轄区域内において、事業者等に対し、繁華街等の安全・安心を確保するために必要な当該繁華街等における犯罪の発生状況等の情報の提供、技術的助言その他必要な措置を講ずるものとする。
同時に繁華街関係者が警察への情報提供を言外に求めていることは協議会の構成、あり方から推測できる。実際の協議会活動は条例違反者の摘発、情報提供という名の密告が組織的に行われることになりかねない。
むしろ、条例の文章からそのような組織を作ること目的としている、推進協議会が出来てしまえば運営上恐ろしい組織に化けるという疑念を消すことはできない。このような条例は民主主義を圧殺して、本来は警察の責務である治安維持に市民を巻き込み、地域ぐるみで密告社会の温床を形成するものであり危険きわまりない。議席の多数派によって決めてはならない憲法違反の治安維持条令ではないかと思うのです。議決を急ぐ理由はどこにもない。形式民主主義にならないように都議会議員は党派を超えてしっかりと議論してもらいたい。なし崩し的に条例改正を繰り返し、いつのまにか人権をおびやかす法律を作ったと同じ結果になる。ぼくの邪推であることを期待したいが、このままでは世の中が嫌な感じの坂道を転げ落ちそうに思える。警察機構が治安維持を責務にするこを否定しないが、警察の価値観に基づいた警察協力市民団体を東京につくり、この条例が望んでいる全国ネットワーク化の企てにはとてもじゃないが賛成しかねる。議員のみなさん、市民の皆さんはどう思いますか。
(写真;東京都公式ホームページより転載)
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by daisukepro | 2009-03-16 01:13 | 憲法


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