「海賊対処法案」は自衛隊の武器使用が狙い。「さみだれ」改憲

ソマリア沖に海賊が出没している。海賊といってもここは南米のカリブ海ではない。ハリウッド映画「カリブの海賊」のようにドクロマークの旗を掲げた海賊船や格好いいジョニーディップなどは登場しない。夜陰に小船にのり石油タンカーに接近、乗組員などを誘拐拉致して身代金を要求する。漁師にも、難民にも変装する。金目当ての犯罪である。海賊が現れるアデン湾は地中海からスエズ運河を渡り、紅海を抜け、インド洋に至る海運航路の要衝である。各国の船舶は絶えずここを往来している。海賊の根拠地はソマリアにあるとされているが、ご存知のようにソマリアは長期にわたる内紛で無政府状態が続いている。
映画「ブラックホークダウン」(予告編参照)をご覧になった方は思い出してください。市街地に墜落した軍用ヘリ「ブラックホーク」を救出に行く米軍の活躍をアメリカ軍の視点で描いた戦争アクション映画だが、ソマリア内紛の実態が分かる。ソマリア内紛はアメリカをはじめとする超大国の内政介入によって拡大、長期化したものだ。そして、国連の軍事介入が失敗して、統治能力が失われた。軍事介入が事態解決するどころか、いまや、「干ばつ」、「飢餓」、「疫病」など混乱と貧困と恐怖がソマリア全土を覆ている。ソマリアの娘さんは結婚するならかっこいい海賊の花嫁になりたいという話もあるそうだ。ソマリヤの現状が国際紛争の結果として起こっていることはまぎれもない事実だろう。そこへ、日本の海上自衛隊がでかけて、アメリカ軍と情報を共有しながら海賊退治を任務に武力を行使しょうと言うのだ。

日本のメディアは北朝鮮のミサイル発射やWBC報道でにぎわっている。その裏側でソマリア沖のアデン湾では重大な事態が進行中である。
3月13日、呉港から出撃した海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」「さみだれ」はアデン湾の海上で船団護衛の任務に就いている。報道によれば、4月3日夜間(現地時間)、海上自衛隊はシンガポール船籍のタンカーから要請を受け、接近してきた小型船にサーチライトを照射、音響装置から大音響を発して、敵を排除したという。新たに装備した新型機関砲など武器使用はされなかったが、軍事用語ではこれを会敵というらしい。小型船が停船せず、発砲するなど抵抗を見せれば交戦が始まり、戦死者がでないとも限らない。しかも、そのような行為が適法かどうか、法律の国会審議はこれからなのである。幸い、敵(小型船)が逃走したため、そのような危険な事態は起こらなかった。大音響の発生装置もこの任務のため装備したものという。そのほか、護衛艦には戦死者の遺体を保存できる死体安置所が船内に置かれているそうだ。
政府は「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」(海賊対処法案)を国会に提出、4月14日に「海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止および我が国の協力支援活動に関する特別委員会」(深谷隆司委員長)というながーい名の委員会を開き、4月中に衆議院を通過させたい考えである。この法案は上記のような事態が発生した場合、武器使用を可能にするための法案である。今回はソマリア沖だが、法案に海域限定はなく、期間も定めがない。海賊行為があれば世界の海のどこでも、いつでも出撃して、武器が使用できる。これはどこから見ても憲法違反ではないか。ところが、法案の説明では日本国憲法が規定する武力行使、交戦権の行使とは国家間の戦争のことであり、海賊行為はこれに相当しない。憲法が規定する戦争はこの戦争(テロ行為)を対称としていない、非対称の戦争だから武力行使をしても憲法違反にあたらないという旧日本軍的解釈によって自衛隊の武力行使を認めようとするものだ。
しかし、戦争の世紀と呼ばれた20世紀が終わり、21世紀は国家間の戦争がなくなった。その代わりに、9・11以後、世界中にテロや地域紛争、民族紛争が多発するようになった。それは皆さんがよく知っている通りです。
この情勢の中で自衛隊の武力行使を野放しにしたら、国際紛争が発生して自衛隊が出動すれば世界中の国際紛争や内紛で自衛隊の武力行使ができることになる。しかも、海賊対処法案には「日米軍事約束の遵守」が明記されている。現在、世界中で軍事行動を展開しているアメリカ軍と共同軍事行動ができる。繰り返しになるが、日本国憲法九条があっても、理論上、いつでも、アメリカ軍の要請があれば世界中どこでも自衛隊が出動して武力行使が出来ることになる。地域紛争やテロが多発する現代だからこそ、憲法九条は厳格に守らなければならない。
海賊退治と言うけれど、アデン湾の銃声一発がナショナリズムを煽り、憲法九条改正の呼び水になりかねない。こんな危険な恐ろしい法案を成立させてはならないと思う。特別委員会審議内容に注目したい
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by daisukepro | 2009-04-11 19:14 | マスコミ


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