「日本政府は米核政策の転換に反対だ」

「日本政府は米核政策の転換に反対だ」

固い話ばかりで、申し訳ない。今日は長崎に原爆が投下された日なのでお許しください。

一昨日(8月7日)、読売新聞朝刊の一面の左隅の記事に目が止まった。
一面トップは「裁判員裁判初の判決」、黒地に白抜きの四段抜きの大見出し、その記事は2段抜きで「米大統領広島・長崎訪問困難に」と目立たないように掲載されていた。しかし、読んでみるとすこぶる面白い。
オバマ大統領が年内に来日するという噂が流れていたが、知っての通り、今年11月初来日することが決まった。オバマ大統領が核廃絶の決意表明をしたプラハ演説に感動して「できたら被爆地を訪問して欲しい」というのが日本人の気持ちだろう。デザイナーの三宅一生氏もオバマ大統領のプラハ演説に感動して自らの原爆体験に触れながら大統領が広島を訪問するよう訴えたメッセージを送った。チェ・ゲバラも広島を訪れて涙を流したではないか。普通の日本人はオバマ大統領の広島・長崎訪問を歓迎する。勿論、どこの国にもいるように、歓迎しない人もいる。いまだ原爆症で苦しむ人々をみると、日本人の心情は原爆投下の責任を追及するより、原爆で苦しむ人々を二度と再びみたくない、人間を原爆で苦しませてはいけない、そのためには原爆を投下させてはならない、持たせたてはいけない、つくらせてはいけない、地球上から核兵器を廃絶したいと望んでいると思う。だから、オバマ大統領にも原爆の悲劇を直視して欲しいと切望しているのだ。

ところが、読売新聞の記事は以下のようになっている。
複数の日本政府関係者が6日、「オバマ大統領の被爆地訪問は困難であることを明らかにした。理由は原爆投下の意義をめぐる議論に発展しかねず米国内で反発を招く恐れがあるとの判断が強まった」のだという。滞在時間が1日程度となるから国内移動が難しくなったという事情もあるのだとか、日米関係筋は「初来日の際に歴史認識にかかわる問題を扱うのは難しい」とか、オバマ大統領の被爆地訪問を阻みたい思惑が見え見えではないか。

読売記事に出てくるこの複数の日本政府関係者、日米関係筋とは誰なのか。顔のないゴースト、その正体が見たい。「歴史認識にかかわる問題を扱うのは難しい」どころか大統領の歴史認識はプラハ演説ではっきりしている。オバマ大統領はプラハで下記のように演説している。

「私たちは、20世紀に自由のために戦ったように、21世紀には、世界中の人々が恐怖のない生活を送る権利を求めて共に戦わなければなりません。そして、核保有国として、核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任があります。米国だけではこの活動で成功を収めることはできませんが、その先頭に立つことはできます。その活動を始めることはできます。従って本日、私は、米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言いたします。」
オバマ大統領は解決しなければならない課題を挙げた後
「いずれの課題も、すぐに、あるいは容易に解決できるものではありません。いずれも、解決するには、私たちが相互の意見に耳を傾けて協力すること、時に生じる意見の相違ではなく、共通の利害に重点を置くこと、そして私たちを分裂させ得るいかなる力よりも強い、共通の価値観を再確認することが必要な課題ばかりです。これこそ、私たちが続けていかなければならない取り組みです。私がヨーロッパへ来たのは、その取り組みを始めるためです。」と述べている。

オバマ大統領は日本に何のために来るのだろうか。毎年8月6日、広島の式典に来て核廃絶の決意をのべながら、核の傘強化を平然とのべる日本の首相とは違う。

ゴーストたちの話に戻ろう。

憂慮する科学者会議のカラキ−氏から3分間の緊急メッセージが日本に送られてきた。ユーチューブから静かな声が流れてくる。

「日本の皆さんが知らなければならない重要なことがあります。それは、日本の外務省や防衛省で、外交安保にかかわる官僚たちが、米国のカウンターパートに対し、「日本政府は米核政策の転換に反対だ」と訴えているという事実です。
米政府内ではオバマの核政策転換に反対を唱える人々がいます。とりわけ国務省や国防総省、そして国家安全保障会議のアジア専門家から反対の声が上がっています。これらの人々が、米核態勢に求められている転換に反対する最大の理由が、日本政府が表明する「懸念」なのです。
米国の新しい核兵器政策が決定するのは、今年9月あるいは10月です。残された時間はあとわずかです。米核政策の転換は、プラハ演説でオバマ大統領が述べたビジョンの実現に不可欠です。
もし、オバマ大統領がプラハで訴えた米核政策の転換というビジョンが、人類の歴史上で唯一、核攻撃の犠牲となった国の政府の反対で、打ち砕かれるとしたら、それはまさに皮肉であり悲劇にほかなりません。日本の皆さん、今こそ日本政府、そして米政府に向けて、「私たちはオバマ大統領がプラハで示した米核政策の転換を力強く支持します」と声を上げていくことが重要です。

読売新聞の記事に出てくる日米関係筋とか、政府関係者は日本の外務省や防衛省、外交安保にかかわる官僚たちであり、アメリカのロビーにも出没していることが明白ではないか。彼らはオバマ大統領の被爆地訪問に最大の懸念を持ち、阻みたいのです。

これまでのアメリカの世論によれば、60%が原爆投下は戦争を終わらせるために意義があったと考えているようだ。
しかし、事実が明らかになるにつれて、アメリカの世論は変わりつつある。
写真家中村悟郎さんが5月にアメリカで写真展を開きロサンゼルスの大学で講演を依頼された。中村さんはベトナム戦争で使われた枯れ葉剤の被害を追及している写真家として著名です。

以下、中村さんのエッセイからの引用をしておきます。オバマ大統領になってからアメリカでも変化が起こっていることが分かります。

私は思い切って私の考えかたを枯葉剤会議の聴衆に伝えた。 「被害はベトナムのほうが何百倍も深刻である。 それに対する補償を米連邦最高裁が今年2月に最終的に拒んだのは客観的に見て不当である」 「アメリカがベトナムで行なった枯葉作戦は明らかに戦争犯罪といえる」。

 そして私はオバマ演説を引用しながらこうしめくくった。 第2次大戦後の歴代米大統領は 「ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下は正しかった。 それによって何万という米兵の命が失われずに済んだのだから」 といい続けてきた。 だがオバマ新大統領は違った。 「最初に核を使用した国の道義的責任として、 核廃絶を目指す」 とプラハで述べている。 すばらしい演説である。

 ところが、 フロリダのエグリン米空軍基地には現在も、 ベトナムで枯葉作戦を行ったC-123散布機が展示されていて、 その脇にはブロンズ製の顕彰碑がある。 そこには 「枯葉作戦は崇高な作戦であった。 それによって何万というアメリカ兵の命が失われずにすんだのだから」 という文字が刻み込まれている。 いかなる残虐兵器を使おうと 「正しかった」 としてしまうこのような思想とは決別すべき時がきたのではないか、 と。

 そのとたんに劇的な事態が起きた。 会場の人々が立ち上がりスタンディング・オベイションとなったのである。

会場にはいろんな立場いろんな考え方の人が居たはずである。 その人々がこうした反応を見せた。 言うべきことを言って良かったと思った。 アメリカは変化しているとも感じた。 この国の懐の深さに触れるとともに、 写真や言葉や、 さまざまな手段で臆せず働きかけることに充分意味があることを知ったのであった。

読売新聞の懸念はもはや幻想でしかない。世界は少しずつ変わろうとしているのだ。私たち日本人がオバマ大統領の広島・長崎訪問を切望していると声を上げよう。
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by daisukepro | 2009-08-09 13:43 | 憲法


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