バクウダットのテレビは何を報道しているか

バクッダット市民は毎日テレビで何を見せられているか
再び、バクッダトバーニングからーーーーー

「朝、目が覚める。歯を磨く。眠気を目から洗い落としてキッチンに向かう。コーヒーか紅茶を一杯に、朝ご飯を何か。ふらりと居間に入って、リモコンを探す。いつもの場所にあった。どういうわけか決まってソファーのクッションの間にはさまってる。テレビをつけ、立ったままチャンネルを回して、眠っていた6時間の出来事を要約してくれる短いニュースか何かを探す。最後に、画面に収まったさわやかな顔におちつく。豊かな髪、はなやかなパワースーツ、歯の装いも忘れず、色鮮やかな爪で、穏やかにニュースを読んでいる。このアンカーはジュリー・チャン。CBSの「アーリー・ショー」(The Early Show)が、何とニューヨーク五番街から生放送されている!

 このテレビを見ている人はイラク人。でなければヨルダン人、レバノン人、またはシリア人、サウジアラビア人、クウェート人、それでなければ…でも、分かるでしょう。

 2年前、イラクの戦争の大半はスマート爆弾やハイテク・ミサイルで爆撃されることだった。今は違う種類の戦争になった。むしろ同じ戦争の別の面に過ぎないのかもしれない。今や私たちはアメリカのメディアからの攻撃にさらされている。メディア攻勢は瞬く間にあらゆる場を席巻した。

 まず、「ボイスオブアメリカ」(VOA)のように戦争前でも聞けたラジオ放送が布石になった。戦後は他のラジオ局が次々生まれた。例えば、無機的な声で私たちに武器を置け、家に留まれ、と命じたラジオ局。イラク訛りでアメリカのニュースを送り込んだラジオ局。音楽だけを流すラジオ局。その上衛星放送があって、私たちは絶えずアメリカの音楽を聴き、アメリカのホームコメディや映画を見ている。公平を期そう。標的はイラクだけではない。アラブ諸国全体がねらい打ちされている。しかも、すべて巧妙に仕組まれている。

 「アル・フラ」(Al-Hurra)は自由を標榜するテレビ局で、アメリカがアラブ世界にプレゼントしたもの。何をしているかというと、歴史的出来事に関するドキュメンタリー(アメリカのドキュメンタリー)や映画スター(アメリカの映画スター)、リゾートスポットのドキュメンタリーを翻訳して私たちに見せてくれる。いたるところでアラブ人アンカーがニュースを伝える。(まるで「フォックスニュース」をアラビア語で見ているような気分。)アラブ世界についてアメリカの偏向を加えて報道するのがこのニュースだ。

 イラクの新「国営」放送各局はお笑いぐさにほかならない。最高の傑作は--ぞっとするという意味よ--アル・イラキヤ(Al-Iraqiya)。アメリカがスポンサーだと言われているけれど、その姿勢は紛れもなくイラン寄り、反スンニ派だ。これ見よがしに「テロリスト」を映し出して、わが国の国家警備隊が家宅捜索に有能なばかりか、街ゆく人々を苦しめる技も優れていることを見せつけようとする。おかしなことに、テロリストは大方オマールやオサマンなどのような「スンニ」風の名前がついている。彼らはモスクでセックスをしたことや女性を強姦したことを認める。吐き気のするような話ばかりだ。でもイラク人は信じない。なぜなら、イラク人、スンニ派、イスラム教狂信者は困りものだというアメリカの定義を補強するために制作されたことが明らかだから。心理作戦の工作員はもっと巧妙な手が思いつかないのかしら?

 MBC放送のコレクションもある。実体はサウジアラビア資本だけれど、知るかぎりドバイに本社を置く。チャンネルがいくつかある。最初はまずアラビア語放送が主体のMBCで、十分に無害だった。トークショーや討論番組、エジプト映画のほか、時には音楽番組やファッションものを流した。

 次にMBCのアル・アラビアが登場した。サウジアラビアがアルジャジーラの解毒剤にするつもりで新たに開設したチャンネルだ。私たちは並行してMBCのチャンネル2も見ていた。これは英語による映画とテレビ番組だけが流れる。番組の中身はさまざまで、「オプラ・ウィンフリー・ショー」[訳注:全米のトークショーで過去18年視聴率トップ。オプラ・ウィンフリーは映画『カラーパープル』に出演]のようなトーク番組から「フレンズ」「サード・ロック・フロム・ザ・サン」「サインフェルド」のようなコメディーまで幅広かった。今年になって、MBCは不可思議なことをした。チャンネル2を24時間放送の映画専門チャンネルにして、あらゆる種類の映画--古くはクリント・イーストウッドのカウボーイもの、近作では『ビューティフル・マインド』など--を提供する、と発表したのだ。テレビ番組とコメディーは新設のMBCチャンネル4に移されるということだった。

 私も初めはこうした変化を歓迎した。映画の大ファンというわけでなし、ひとつのチャンネルで好きなコメディーやテレビ番組がみな2時間の映画に邪魔されずに見られると知って、すてきだと思った。いつでもチャンネル4を回せば、せいぜい30分から1時間で終わる番組で、興味をそそるものやおもしろいものが見つかるわけだから。初めてMBCチャンネル4で「60ミニッツ」を見たとき、何かおかしいという気はしなかった。テーマが何だったか思い出せない。でも、ぼんやりながら興味を持ったことと、なぜ私たちが「60ミニッツ」を見ているのかとどこかにとまどいがあったことを覚えている。間もなく、夜に放送される「60ミニッツ」だけの問題でないことに気づいた。朝の「グッドモーニング・アメリカ」、夜の「20/20」「60ミニッツ」「48アワーズ」「インサイド・エディション」「アーリー・ショー」…アメリカのメディアが絶え間なく攻撃を浴びせていたのだ。快活な声がアラビア語で言う。「さあ、あなたも『みんな』の見る番組が見られますよ!」。「みんな」というのは、明らかに無数のアメリカ人を指している。

 MBCチャンネル4の番組表はこんな具合。
9:00am CBSイブニングニュース
9:30am CBSアーリー・ショー
10:45am ザ・デイズ・オブ・アワー・ライブズ(The Days of Our Lives)
11:20am ホイール・オブ・フォーチュン(Wheel of Fortune)
11:45am ジェパディ(Jeopardy)[訳注:クイズ番組]
12:05pm 夜の番組の再放送--20/20、インサイド・エディション、など
 番組はまだまだ続く。

 ここ何週かはこんな番組に魅了されていた。最大の衝撃は、ニュースがあまりにクリーンすぎるという事実だ。まるで病院食のよう。なにもかも整理が行き届き、消毒されている。いちいち区分けされていて、分量に細心の注意を払って配分された有様が感じ取れるほど。アフガニスタンの女性の権利に2分間、イラク軍の訓練に1分間、なんとテリー・シャイボさん[訳注:植物状態だった女性で、尊厳死をめぐり論議を呼んだ]に20分。報道はどれも軽快で楽しげだ。アンカーはそれ相応に関心ありげな顔をしているが、その実まったく気にも留めていない。

 1カ月ほど前、私たちは「20/20」で、あるインタビューの供応を受けた。インタビューされたのはサブリナ・ハーマン--アブグレイブの写真の一部に登場した、あの魔女。例の人よ。顔のない裸のイラク人たちを積み上げ、人間のピラミッドに仕立て上げて笑っていたわ。聞き手はエリザベス・バーガス。このインタビュー番組は吐き気を催すほど、何から何まで不快だった。サブリナは潔白で、軍の規律に縛られ、上官への怖れでがんじがらめになっていた--これが、あの人たちが描こうとしていた姿。番組は、米軍兵士がジュネーブ条約(人道教育の必要性など)について一度もまともに教育されなかった状況を何度となく繰り返し、かわいそうなサブリナがスケープゴートに仕立てられる過程に幾度も触れた。戦争前にサブリナが働いていたレストランを映し、誰もかれも彼女が蝿一匹殺せないほど「やさしい人」だと思っている姿を見せつけた。

 私たちはテレビを前に座っていた。別世界に属するような、別の銀河にいるかのような気がした。さまざまなウェブサイトから、私はいつも嗅ぎとっていた。アメリカのニュースの主流が現実からはるかにかけ離れていることを。どれくらい離れているかがわからないだけだった。すべてが爪を抜かれ、単純にされる。誰もが誠実この上ない。

 それに私は、リアリティーショーがなぜこれほど世の中に受けるのかわからない。「サバイバー(Survivor)」「マーダー・イン・スモールタウンX(Murder in Small Town X)」「フェイキング・イット(Faking It)」「ザ・コンテンダー(The Contender)」…きりがない。生活に飽き飽きしたあまり、他人の生活が一変するさまを見なければやっていけないというの? 」

 詳細を知りたい方は下記のサイトへ
Baghdad Burning バグダードバーニング by リバーベンド
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by daisukepro | 2005-04-07 01:41 | イラク戦争


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