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将棋の羽生善治棋聖(47)が五日、史上初の「永世七冠」

将棋の羽生善治棋聖(47)が五日、史上初の「永世七冠」を達成した。通算七期目の竜王を奪取して「永世竜王」の資格を得て、永世称号の規定のある七タイトルすべてを制覇した。

 四日から鹿児島県指宿市で行われていた第三十期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)の第五局で、挑戦者として渡辺明竜王(33)に勝ち、対戦成績四勝一敗で竜王を獲得した。

 羽生新竜王は二〇〇八年までに、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖の六タイトルで永世称号の有資格者となった。残る永世竜王を懸け同年と一〇年の二回、渡辺竜王(当時)に挑戦したがいずれも敗れており、今回は雪辱を果たした。

 自身が最多記録更新を続けている通算タイトル獲得数も九十九期に伸ばし、前人未到の百期まであと一期とした。歴代二位は故大山康晴十五世名人の八十期。

 羽生竜王は棋聖と合わせて二冠に復帰。渡辺前竜王は棋王の一冠に後退した。竜王戦の優勝賞金は将棋界最高の四千三百二十万円。

◆47歳「最後のチャンスかと」

 「もしかしたら最後のチャンスかもしれないという気持ちで臨みました」-。「永世七冠」を達成した羽生善治さん(47)は今年、タイトルを二つ失った。若手の台頭に押される中で成し遂げた史上初の快挙だった。

 四日から行われていた第五局は、先手の羽生さんが序盤、銀をぶつける積極的な新手順で優位に立った。二日目の五日は、午前中から羽生さんの猛攻が決まり、控室にいた棋士たちは、勝敗の行方の検討を早々と打ち切った。

 午後四時二十三分、自玉の詰みを見て、渡辺さんが「負けました」と頭を下げた。最後の一手を指す羽生さんの手は小さく震えていた。羽生さんは勝利を確信した時に手が震えることで知られる。自身が「これ以上集中するともう元に戻れなくなってしまうのでは」と感じるほど深い集中からわれに返った時に起こる現象だ。第二局の終盤でも、駒を取り落としそうになるほど手を震わせた。

 終局後、記者会見に臨んだ羽生さんはいつも通りの淡々とした表情ながら、言葉の端々に達成感をにじませた。二十五歳の時に達成した七冠同時制覇との違いを問われ、「積み重ねの中でたどり着けたという感慨が、一番違います」としみじみ語った。

 四十七歳二カ月でのタイトル獲得は、年長記録の史上四位。一方で今年は王位、王座と二つを失冠した。六月には最年少プロの藤井聡太四段(15)が新記録の二十九連勝で脚光を浴びるなど、世代交代の波が押し寄せる。「たくさんの若手棋士が台頭して厳しい状況」「十代、二十代と違って次のチャンスがある保証もない」と随所に危機感をのぞかせた。

 「将棋の本質はまだまだ何も分かっていない」ともいう。それでも長年トップにいられるのは新しい発見を大切にし、柔軟に取り入れることを繰り返してきたからだ。

 「将棋には長い歴史があるが盤上はテクノロジーの世界。日進月歩で進み、過去の実績は意味がない。常に最先端を探求する気持ちでいます」。棋界に君臨する第一人者は、まだまだ満足しそうにない。 (樋口薫、岡村淳司)

<はぶ・よしはる> 1970年9月27日、埼玉県所沢市生まれ。故・二上(ふたかみ)達也九段門下。85年、プロ入り。タイトル獲得数は本紙主催の王位18をはじめ、竜王7、名人9、王座24、棋王13、王将12、棋聖16。

<永世称号> 将棋界の同一タイトルを一定数獲得した棋士に贈られる。いわば将棋界の「殿堂入り」を意味する制度。現在ある8大タイトルのうち、新設された叡王以外の7タイトルでそれぞれ規定があり、引退後に名乗るのが原則。

(東京新聞)

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by daisukepro | 2017-12-06 07:09 | 文化


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