続続続々「石原慎太郎の弁明」
石原慎太郎現職知事が日曜朝のテレビ「報道2001」(CX)「サンデープロジェクト」(テレビ朝日)に連続出演、渡世(都政)私物化の弁明を行った。CXはとりあげる気もしないが、「サンプロ」に至っては疑惑にすべて答えますという謳い文句にもかかわらず、田原総一朗の追及が及び腰のため、都知事選挙の事前運動まがいの番組になった。すべて取り上げたらきりがないので、印象に残った2カ所の場面を書き留めておくのも悪くない。ルペンにまさるとも劣らない世界的な国粋主義者の人柄を理解するためには格好の教材になるだろう。 ジャーナリスト気取りの司会者田原総一朗が政治家石原慎太郎はともかく、魅力的なのは作家石原慎太郎だと切り出す。「処刑の部屋」、「完全な遊戯」などの反モラル的小説はすばらしい」などと歯の浮くような口調で持ち上げる。さすが、石原知事は「発表当時は非難が集中したけど、三島由紀夫と川端さんは評価してくれたな」などと臆面もない。「政治と小説を一緒にされたら困る」といいながら、「ぼくは書きたい小説を7本持っている」などと満更でもなさそうだ。「俺は権威が嫌いだ。今の権威は国である。だから国と闘う」などと国家的権威と闘う男に見せかけようとする。これまで彼のやってきたことをこれほど見せつけられて、なおかつ、こんな欺瞞を信じる都民がいるだろうか。 都知事選で落選されたらこまるといいながら、田原総一朗の狙いとは違った人間、石原慎太郎の正体が会話の間から透けて見えた。(田原は俺がわざと仕掛けたと云うかもしれないが)ゴマすりに弱いワンマン、独裁者に共通した特性を石原知事が持っていることが証明されたようなものだ。たしかに、「完全な遊戯」が批評家の袋だたきに遭っているとき三島由紀夫は石原慎太郎を擁護したが、三島発言はそう単純ではない。 まず、石原慎太郎が「太陽の季節」で芥川賞を受賞して文壇デビューした時には「氏の人柄のタイプは文壇ではずいぶん珍種である」と前置きして「避暑地の良家の子弟の間ではごくふつうのタイプである」と評している。さらに「完全なる遊戯」では「敵役があまり石原氏をボロクソに言ふから、江戸っ子の判官びいきで、ついつい氏の肩を持つやうになるのだが、あれほどボロクソに言はれてなかつたら、却つて私が敵役に回つてゐたかもしれない」と話している。 作品の評価になるとさらに厳しい。 「われわれは文学的に料理された青春しか知らない」が「氏の獨創は、おそらくそういう(湘南あたりにいる良家の子弟の)生の青春を文壇に提供したことであらう。」と書いている。ずいぶん遠回しではあるが、文学とは違うと言っているようにも思えるのだが。(三島由紀夫研究会のメルマガ会報より引用) もうひとつは交際費問題である。7年間で155回、石原都知事が側近や政治家と高級料亭で税金を使って飲み食いしたお勘定は1615万円、接待相手は誰だかわからない。そのうち航空業界関係者8人、テレビ局プロデュサーら3人との宴会に関して違法という判決がでた。それにも関わらず、石原都知事は謝罪するどころか、控訴して「判決が出れば返還しますよ」と云う態度である。こんな単純な判決が最高裁で無罪になる訳がない。返せばいいでは済まない。違法であれば都民に謝罪したのち、返還して辞職するのが当たり前である。東京都は独裁国家ではない。政治家ならば、この段階で都知事立候補を辞退しなければならない。 最も傑作なのは、15回分、2億4350万円も乱費した海外出張費の弁明だ。まず、「出張したのは私一人ではない」と同行した職員らに責任を転嫁したまでは愛嬌だが、外出張、海外視察という名の大名観光旅行の実体を知るものにとっては笑いぐさである。さらに、この弁明がふるっている。 「ニューヨークとパリに出張所があったが、経費がかかるので閉鎖した。この措置で年間2億が8年で16億円を削減(都財政に貢献した)、その代わり必要があれば出張することにしたので出張費が増えた(わずか3億円だ、使たって問題ないじゃないの)」というのである。海外出張所閉鎖と石原都知事の海外出張と呼ばれた大名旅行とは何の関係もないのだ。()内は同好会注 この弁明の仕方はギリシャローマ時代から賄賂を取る役人の弁明とそっくりである。業者が130万円の見積もりを出すと、役人は「そりゃ高い、税金を使うのだから国のために100万にしろ」という。業者は「そりゃ無理だ。せめて110万円でどうですか」と懇願する。そこで役人は「それじゃ120万払ってやろう、そのかわり、お前は110万でいいと言ったのだから10万はおれにもどせ」と言った後で、役人はこう説明する。「俺の働きで国は10万円得をした、お前も俺の裁量で10万得をした。おれは国とお前に貢献したのだから10万円受け取っても問題はない。これで三方一両得だ」。ただし、損をした納税者を除けばの話である。こうして受け取った賄賂で、ローマの役人は優雅な暮らしをしたという。石原の弁明はこのお役人の思考回路と似たところがあると思いませんか。 若き作家石原慎太郎作品「完全な遊戯」は青年たちが、精神を病んでいる女性を拉致監禁輪姦した後で女郎として客を取らせ、あげくに殺害して「今度の遊びは割に安く済んだな」で終わる後味の悪い小説である。 小説の世界ならまだしも、こんな低次元な男に知事をやらせておくと都民はひどい目に遭うだろう。そしてさんざん税金を浪費した挙句、7本目の石原慎太郎小説に「今度の遊びはえらく儲けたな」と書くかもしれない。それでもあなたは石原慎太郎さんに投票しますか。 追記 三島由紀夫研究会のメルマガ会報 (平成18年2月28日)に以下のような記述があったので追加します。作家三島由紀夫の作品は好きになれないが、猟奇的な事件が頻発する今日この頃、三島由紀夫の予感は現実になっている。 「1970年十一月十八日。作家三島由紀夫は図書新聞の文芸評論家古林尚と人生最後の対談に臨んでいた。 そこで石原慎太郎に話題が及んだ。古林は「石原慎太郎が「完全なる遊戯」を出したとき、三島さんが、これは一種の未来小説で今は問題にならないかもしれないけれど、十年か二十年先には問題になるだろう、と書いていたように記憶していますが・・・・・・。」
by daisukepro
| 2007-02-12 23:01
| テレビ
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