続「サクラの花の満開の下で」
サクラの花の咲く頃、一人の青年が訪ねてきた話を書いた。
一年前、向のマンションに住む女性の通夜が行われていた。毎年窓からサクラの花を眺めるのを楽しみにしていたが、願いもむなしく亡くなられた。
その純朴そうな青年は霊前に花を手向けたいので、一枝を分けてくれないかという。一年経って、サクラの花の咲く季節になった。
また、あの青年が訪ねてきて、サクラの枝を所望した。
まだ、遅咲きの花びらが風に舞っているが、今年のサクラの見頃は終わった。
新しく竹箒を買い、花びらを道野辺に掃き寄せた。
華やかな興行が終わり、客が引けたテントの後片付けをしている楽日のような気持ちがする。