カテゴリ:憲法( 118 )

どんなにごまかして衣を着こんでも、その下のよろいは隠せない(赤旗主張)

安倍晋三首相が施政方針演説で改憲について憲法審査会で各党の「議論を深め、前に進めていくことを期待」と前のめりながら淡々とした発言をする一方、直前の自民党両院議員総会では「いよいよ実現する時を迎えている」と露骨に改憲をあおる、踏み込んだ発言をしました。首相らの憲法尊重擁護義務を意識してか首相と自民党総裁を使い分けたともみられますが、どんなにごまかして衣を着こんでも、その下のよろいは隠せません。憲法9条に自衛隊を書き込むなどの改憲案を今年の国会で発議し、国民投票に持ち込むことを狙っているのは明らかです。

首相と総裁使い分けて

 安倍首相は昨年5月に改憲派の集会等で、9条に自衛隊を書き込むなどの改憲を実行し、2020年に施行すると明言した際にも、「自民党総裁としての発言だ」とごまかし、首相としての今年の年頭会見(4日)でも「憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく、自民党総裁として、私はそのような一年にしたい」と発言しています。首相の改憲発言が、憲法99条が定める首相や閣僚などの憲法擁護尊重義務に反することを百も承知で、首相と自民党総裁を使い分けるひきょうな態度です。

 しかし、どんなにごまかしても、安倍改憲の危険性を隠し通すことはできません。憲法9条に自衛隊を書き込めば、2項の戦力不保持、交戦権否認の規定の空文化に道を開き、安保法制=戦争法を“合理化”し、アメリカの始める戦争で無制限に武力行使することになりかねません。「非常時」に国民の基本的人権を停止する「緊急事態条項」の導入なども危険です。

 年明けの新聞などの世論調査でも、安倍政権での改憲に「反対」が54・8%(共同通信、15日付各紙)、憲法に自衛隊を書き込むことに「反対」が52・7%(同)などとなっています。主権者である国民のこうした反対を無視して、今年を「改憲実現の年」にしようという首相の発言が、権力を規制する憲法の立憲主義を踏みにじる、最悪の国民無視の言動であるのは明らかです。

 無視できないのは年頭会見などで首相が、「私たちがどのような国づくりを進めていくのか。この国の形、理想の姿を示すものは憲法」などと言い、施政方針演説でも同じように「国の形、理想の姿を語るのは憲法」などと繰り返したことです。改憲を目指す首相は一体どんな「国の形」を「理想」とするのか。首相は今年の自民党の仕事始めのあいさつでは「(敗戦直後の)占領時代につくられた憲法をはじめ、さまざまな仕組みを安定した政治基盤のうえで変えていく」とも表明しています。首相が持論の「押し付け」憲法論に立って、歴史を戦前に引き戻すような「国の形」を憲法で国民に押し付けることは絶対に許されません。

国民主権と平和主義貫き

 現在の日本国憲法は戦前の専制支配と人権抑圧の政治が侵略戦争に突き進み、日本国民とアジアの諸国民などに多大な被害を与えた反省の上に立って、国民主権や平和主義、基本的人権の尊重などを原則にしています。日本が世界に誇る貴重な財産であり、そうした「国の形」や「理想」をかえるいわれは全くありません。

 歴史にも世界の流れにも反した安倍改憲阻止が重要です。



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by daisukepro | 2018-01-24 18:42 | 憲法

憲法尊重擁護義務  安倍首相が憲法改悪を提示

 第百九十六通常国会が召集された二十二日、安倍晋三首相(自民党総裁)は党両院議員総会で、改憲について「いよいよ実現する時を迎えている」と表明した。この後の衆参両院本会議で行った施政方針演説では、各党に議論の進展を期待するにとどめた。いずれも通常国会が始まった日に改憲を訴えた言葉だが、改憲を党是とする自民党両院総会での踏み込んだ発言が本音とみられる。 (金杉貴雄)

 党総裁としてあいさつした両院議員総会で、首相は「わが党は結党以来、憲法改正を党是として掲げ、長い間議論を重ねてきた」と強調。「私たちは政治家だから、それを実現していく大きな責任がある。いよいよ実現する時を迎えている。責任を果たしていこう」と強い調子で呼び掛けた。

 首相は今年中の改憲案の発議を目指している。昨年十月の衆院選の結果、改憲勢力が、改憲発議に必要な三分の二以上の議席を衆参両院で維持したことなどを踏まえ、今年こそ「実現の時」という強い言葉を通常国会の冒頭で党所属議員に示し、一層の取り組みを強く促したとみられる。

 一方、首相として行った施政方針演説では、演説の最後で簡単に触れただけ。「国のかたち、理想の姿を語るのは憲法だ。各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会で議論を深め、前に進めていくことを期待する」と語った。

 衆参両院で自民党は、単独では三分の二以上を持っておらず、公明党や、改憲に前向きな野党の賛同が必要。国会での演説では必要以上に踏み込まず、各党に理解を呼び掛けることに重点を置いたもようだ。明治時代の治水事業にも触れ「五十年、百年先の未来を見据えた国創り」のため改憲論議を進めるべきだとも語った。

 首相はこれまでも、首相と自民党総裁という二つの立場から改憲を求めてきた。今月四日の年頭会見では「今年こそ、憲法のあるべき姿を国民にしっかり提示し、憲法改正に向けた議論を一層深める。党総裁としてそんな一年にしたい」と語った。

 憲法は、首相を含む公務員に対して憲法尊重擁護義務を定めている。

(東京新聞)

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by daisukepro | 2018-01-23 09:07 | 憲法

憲法を考える 自衛隊が明記されたらどうなるの


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by daisukepro | 2018-01-17 11:51 | 憲法

安倍晋三首相の下での憲法改正に反対は54・8%

 共同通信社が13、14両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍晋三首相の下での憲法改正に反対は54・8%で、2017年12月の前回調査から6・2ポイント増加した。賛成は33・0%。小泉純一郎元首相らが主張する全原発の即時停止に賛成は49・0%、反対は42・6%だった。内閣支持率は49・7%で、前回調査から2・5ポイント増加した。不支持率は36・6%。

 憲法9条に自衛隊を明記する首相の提案に反対は52・7%で、賛成35・3%を上回った。

 長距離巡航ミサイルの導入は、賛成41・7%、反対46・7%。

(共同)

 世論調査の主な結果

 世論調査の主な結果


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by daisukepro | 2018-01-16 04:18 | 憲法

<国民が愚かであれば愚かな政治ができ、わがままならば、わがままな政治ができる> 5年前の東京新聞社説

気に入らないから、内閣法制局長官の首をすげ替える-。安倍晋三政権のみならず、実は戦前にも、同じような荒っぽい出来事がありました。
 有名な美濃部達吉博士の天皇機関説事件のときでした。一九三五年のことです。天皇は法人たる国家の元首の地位にあるという憲法学説に対し、議員らが猛然と攻撃を始めました。「天皇は統治権の主体であり、国体に反する」などと非難を繰り返したのです。
◆首になった法制局長官
 法制局長官であった金森徳次郎は議会で「学問のことは政治の舞台で論じないのがよい」という趣旨の答弁をしました。自らの著書にも機関説的な記述がありました。そのため、つるし上げを受け、金森は三六年に退官に追い込まれてしまったのです。
 名古屋市出身で、旧制愛知一中、一高、東京帝大卒というエリート官僚でしたが、それからは一切の公職に就けませんでした。“晴読雨読”の生活です。野草を育てたり、高浜虚子の会で俳句をつくったりもしました。それでも警察官や憲兵が視察に来ます。
 戦争では家を焼かれ、東京・世田谷の小屋で、大勢の家族が雑居しました。でも、終戦により、身辺はがらりと変わります。まず、金森は貴族院議員に勅任されます。退職した法制局長官の慣例に従ったようです。
 四六年には第一次吉田茂内閣で、国務大臣となりました。役目は新憲法制定です。「この憲法には一つも欠点がない」というほど、ほれ込みました。議会での答弁も、ほぼ一人で行いました。その数や、百日あまりで、千数百回…。一回で一時間半も語り続けたことがあります。
◆文化で戦争を滅ぼす
 新憲法公布の朝です。破れガラスの表戸を開けると、見知らぬ老人が立っていました。ビール一本とスルメ一枚を差し出し、涙声で喜びを述べました。物資不足の時代のことです。そして、「引き揚げ者の一人」とだけ告げて、老人は立ち去りました。金森は「生まれてから初めての興奮」を覚えたそうです。
 その朝の中部日本新聞(中日新聞)で、金森は「国民全体が国の政治の舵(かじ)をとるという精神が一貫して流れている」と憲法観を語っています。さらに平和主義について「戦争を放棄した世界最初の憲法、そのこと自体非常にレベルの高い文化性を物語るものだ」とも述べました。
 四七年には「戦争は文化を滅ぼすものであって、(中略)文化をして戦争を滅ぼさしめるべきが至当である」という一文を発表しています。でも、日本一国が戦争放棄をしても、意味をなさないという反論が考えられます。金森は、次のように論じました。
 <正しいことを行うのに、ひとより先に着手すれば損をするという考え方をもつならば、永久にその正しいことは実現されない>
 <歴史の書物を読んでみれば、結局、武力で国を大成したものはない(中略)およそ武力の上にまた更(さら)に強い武力が現れないということを誰が保証しよう>
 文武両道といいますが、日本は「文一道」が好ましいと、金森は主張します。戦争放棄を「じつに美しい企て」とも考えました。
 今の政治状況を翻ってみます。「知る権利」を脅かす特定秘密保護法案や国家安全保障会議設置法案が提出されています。その先には集団的自衛権の行使容認が見えます。安倍政権が憲法改正を公約していることは忘れてなりません。
 戦前は「軍事」、現在は「安全保障」の言葉が、かつかつと靴音を響かせ、威張っています。
 金森の憲法論集を編んだ鈴木正名古屋経済大学名誉教授(85)は「今でいうリベラルで、自制心を持っていた人です」と評します。「明治時代には自由民権運動がありました。金森は大正デモクラシーの空気も吸っていました。だから、新憲法は民主主義的傾向の復活でもあり、侵略を受けたアジア諸国をも寛容にさせたのです」
 安倍政権は自制心というブレーキを持っているでしょうか。隣国との融和に熱心でしょうか。大事なのは、政治の舵を握るのは、国民であることです。
◆国民が愚かであれば
 憲法公布の日には、東京新聞(現・中日新聞東京本社)にも、金森は一文を寄せています。
 <国民が愚かであれば愚かな政治ができ、わがままならば、わがままな政治ができる>
 “憲法大臣”の金言です。「国民が愚かなら」の言葉に、思わずわが身を振り返ります。

東京新聞 2013年11月3日


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by daisukepro | 2018-01-08 07:51 | 憲法

世論の動向で9条改憲の発議を狙う安倍晋三。

 安倍晋三首相は4日午後、三重県伊勢市で年頭記者会見に臨み、憲法改正の国会発議の早期実現に意欲を示した。「今年こそ、憲法のあるべき姿を国民にしっかり提示し、改憲に向けた議論を一層深める。自民党総裁としてそんな1年にしたい」と述べた。野党に具体的な改憲案の提出も呼び掛けた。北朝鮮が強行する核・ミサイル開発に触れ「従来の延長線上でなく、国民を守るため真に必要な防衛力強化に取り組む」と強調した。

 改憲を巡り「今後も国民主権などの基本理念は変わることはないが、時代の変化に応じて議論するのは当然だ」と説明。「スケジュールありきではない」とも述べた。

(共同)

 伊勢神宮の参拝を終え、年頭の記者会見をする安倍首相=4日午後、三重県伊勢市

 伊勢神宮の参拝を終え、年頭の記者会見をする安倍首相=4日午後、三重県伊勢市


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by daisukepro | 2018-01-04 21:15 | 憲法

戦争放棄や戦力不保持を定める憲法九条の改憲について「必要はない」が53%で過半数となった。

本社加盟の日本世論調査会が先月九、十両日に実施した憲法に関する世論調査によると、戦争放棄や戦力不保持を定める憲法九条の改憲について「必要はない」が53%で過半数となった。「必要がある」は41%。安倍晋三首相が加速を促す改憲の国会論議には、67%が「急ぐ必要はない」と答えた。一方、九条に限らず、憲法を「改正する必要がある」「どちらかといえば改正する必要がある」と回答した改

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正派は55%で、二〇一六年二月の前回調査(54%)と横ばいだった。

 首相が九条への自衛隊明記案を提唱し、自民党をはじめとして議論が活発化しているが、世論と温度差があることが浮き彫りになった。

 安倍首相の下での改憲に53%が反対し、賛成の39%を上回った。昨年十月の衆院選で改憲が争点だったかを尋ねたところ「争点だったとは思わない」は70%に上った。

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 九条改憲の必要があると答えた人に重視すべき点を聞いたところ「現在の自衛隊の存在を明記するべきだ」が54%で最多だった。九条に限らない憲法改正派に理由を問うと、64%が「憲法の条文や内容が時代に合わなくなってきているから」と回答。「新たな権利や義務などを盛り込む必要があるから」が25%で続いた。

 改憲で議論すべき対象(三つまで回答)は「九条と自衛隊」が62%でトップ。二位以下は「緊急事態条項の新設」36%、「教育無償化を規定」29%、「知る権利・プライバシー保護」22%、「天皇制」22%など。

 改憲を「必要はない」「どちらかといえば必要はない」とした反対派は38%(前回40%)。その理由として、38%が「戦争放棄を掲げ、平和が保たれている」を、31%が「改正すれば『軍備拡張』につながる恐れがある」を挙げた。憲法問題に「関心がある」「ある程度関心がある」は計72%で、前回より微減。一九年夏の参院選までに国会が改憲の「発議をするべきだと思う」は52%に達した。


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by daisukepro | 2018-01-04 21:06 | 憲法

自衛隊明記と緊急事態対応は党内の意見集約が間に合わず、各二案を並べた。

自民党憲法改正推進本部(細田博之本部長)は二十日の全体会合で、改憲四項目について、これまでの検討結果をまとめた論点整理を提示した。安倍晋三首相(党総裁)が唱える九条への自衛隊明記に関し、戦力不保持などを定めた二項の維持・削除の両論併記にとどめた。年明け以降に一案への絞り込みを急ぐ。改憲案の国会発議をにらみ「各党各会派から具体的な意見・提案があれば真剣に検討する」と幅広く合意形成に取り組む姿勢も示した。 

 論点整理は先の衆院選で公約に掲げた(1)自衛隊明記(2)緊急事態対応(3)教育無償化・充実強化(4)参院選「合区」解消-を取り上げた。自衛隊明記と緊急事態対応は党内の意見集約が間に合わず、各二案を並べた。

 九条に関しては、戦争放棄を定めた一項、二項を維持した上で「自衛隊を憲法に明記するにとどめる」とする案、二項を削除して「自衛隊の目的・性格をより明確化する改正を行う」案を併記した。文民統制(シビリアンコントロール)を明記すべきだとの意見にも言及した。

 全体会合では、二項を残して自衛隊を明記する案に賛同する声が複数出た。これに対し、石破茂元幹事長は「九条を改正しないといけないと言いながら、(改憲しても)中身は変わらないというのでは論理が全く一貫しない」と批判した。

 大規模災害時の緊急事態条項に関しては、国会議員の任期延長と政府への権限集中の二案を示した。

 推進本部は来年一月に全体会合を再開し、衆参両院の憲法審査会の議論が本格化するとみられる春までに一本化を図る見通しだ。

 論点整理は、教育無償化・充実強化と合区解消を巡っては、党内の意見がおおむね一致していると強調。教育については、教育費の負担軽減に向けて国の努力義務を定める条文の新設案を盛り込んだ。合区解消は改選ごとに各都道府県から一人以上選出できるとの規定を盛り込むと明記した。

 自民党は論点整理を踏まえ、与野党との協議を早期に始めたい考えだ。細田氏は「憲法はこう改正すべきだと言う党とは、一緒に考えようという立場だ」と記者団に語った。

(東京新聞)

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by daisukepro | 2017-12-21 09:38 | 憲法

日本国憲法を知り、学ぶ

 大工をなりわいとしてきた栃木県茂木町の明良(あきよし)佐藤さん(74)は、8月15日に新しい年が始まる「戦後カレンダー」を1984年からつくり続けてきた。敗戦の昭和20年を元年とする独自の「戦後暦」には、「日本人310万人と隣国及びアジア諸外国の2千万人の戦争犠牲者を忘れず、二度と戦争はしない」という思いが込められている。平和の礎と考える憲法9条の改正論議がかまびすしくなって、憲法について学び始めると、「憲法には初めて知る驚きがたくさんつまっていた」という。自民党が憲法改正推進本部の会合を開いて改憲に向けた議論を再開した今、学者や評論家といった専門家ではない人々が「憲法を知り、学ぶ」重要性は高まっている。明良さんに「憲法びっくり」を投稿してもらった。

【1946年に公布された日本国憲法の原典】
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*  *  *
 私は74になる。東京に40年。田舎に移って34年。その後半の稼ぎは大工でやってきた。

 そんな私が70になって、はじめて憲法をしっかり読んでみた。そしたら驚いた。びっくりの連続。その驚きを皆さんに伝えたい。

 まずは憲法のできるいきさつから。

 安倍首相が「GHQ(連合国軍総司令部)から押しつけられた憲法だから自分たちの自主憲法をつくろう」と盛んに言っているけど、学んでみると、はじめGHQは、自分たちで憲法をつくる気はなかった。日本を間接統治する方針だったから、日本政府に憲法案をつくるように指示した。ところが出てきた政府案(松本試案)にGHQはびっくり。「日本国は君主国とす」「天皇は君主にしてこの憲法の条規により統治権を行う」と明治憲法と似たものを出してきた。「軍国主義の除去と民主的傾向の強化、基本的人権の確立」のポツダム宣言を受諾して敗戦したのに、その受諾内容を無視したものを出してきた。

 これではとてもダメだ。GHQは急きょ方針を変更。日本政府を見限り、自分たちで憲法案をつくった。それもわずか9日間で。これもびっくり。そして吉田茂外相、松本烝治憲法担当国務相らに示した。


それを見て吉田らはびっくり。「天皇がシンボルとは……、主権者たる国民の総意に基づくとは……」

 何から何まで納得しがたい。だが最後は受け入れた。GHQは「最高司令官は万能ではない。この案が受け入れられれば、天皇の地位は安泰になるだろう」と言う。なぜなら、天皇の戦争責任を追及すべきというソ連やオーストラリアなどが参加している極東委員会が間近に迫っている。開かれる前に新憲法案をつくって、日本は二度と戦争をしない体制になった、と極東委員会を納得させなければ、天皇が戦争犯罪人として扱われる可能性もあった。そんなことになったら、日本は混乱し、占領統治がむずかしくなることをGHQは知っていた。

 そして、GHQの意向通り、天皇の戦争責任は免責され、象徴天皇制の憲法体制で戦後の出発となった。

 安倍首相とその取り巻きたちは、この経緯を無視して「押しつけられたから、自主憲法を」と言っている。自分たちの保守政治のふがいなさから、GHQの憲法作成を招き、保守政治が最も大事にしている天皇制護持(象徴だが)のために、GHQが憲法草案をつくったことを頭に入れていない。押しつけどころか、この憲法が天皇制を護持した。この歴史を無視した態度に、改めてあぜん。

 つぎは第一条。「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」

 この文の後半を、よーく見てください。天皇の地位は主権の存する日本国民の総意に基づく、とある。ということは、国民の総意が望まなければ、天皇の地位をなくすことができる、ということ。つまり、象徴天皇の地位を廃止することもできる、と言っている。これはびっくりではありませんか。そんなことが憲法に書いてあるなんて! 主権在民はそれだけ強いということを改めて知った。

 戦前は天皇が主権者。三権のすべて、立法、司法、行政を支配し、軍隊を支配する大権をもつ強大な存在。敗戦後、日本国憲法によって、その天皇が象徴になり、臣民、天皇の赤子といわれた国民が主権者となって、天皇の地位を総意によって左右する存在になった。まさに百八十度逆転。その意味で革命が起こった。でも、その革命はフランスのように市民が戦い取ったものではない。日本人310万人と隣国及びアジア諸外国の人々2千万人の血の犠牲によってなった。それだけに「主権者としての私」を大事にしたい。


つぎは十条。「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」

 この簡単な、ちょっと読んだのでは、何を言っているのかよくわからない条文。そこで調べると、この背後に、深い意味が隠されていた。

 日本国民たる要件とは、日本国籍の要件を言うそうです。そう書いてくれればいいのにね。実はこの条文はGHQ草案には入っていません。

 入っていたのは「外国人(在留外国人)は平等に法律の保護を受ける権利を有す」です。とてもわかりやすい。しかし日本側は、GHQとねばり強く交渉して、この項を削り、代わりにこのわかりにくい国民の要件を入れた。この十条、実は明治憲法十八条と同じ。びっくり! 明治憲法をひっくり返してできた新憲法の中に、明治憲法が入っているなんて! この結果、後でできた下位の国籍法によって、日本国籍を取るには、生まれた子の親が日本国民であること、という古い感覚の血統主義が入った。第三章「国民の権利及び義務」冒頭のこの条文によって、これ以下の各条項の人権の享受は、「日本国籍を有している者だけですよ」と制限が加えられた。

 その結果、長年日本で暮らす外国人の権利が、新憲法施行後、排除された。GHQ草案は「平等に法律の保護を受ける」となっていたのに。日本政府の巧妙な抵抗といい、人権感覚のなさといい、びっくりを通り越しますね。

 つぎは憲法十四条一項。「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」

この条文をよーく見てください。後半に「門地」ということばがありますよ。門地とはなに?です。このことば、いままで人生長くやってきて、聞いたことがありません。GHQはこんなことばを知っていたか、です。

 調べてみると、案の定、交渉の過程で日本側が巧妙に入れた訳語なのです。門地を辞書で引くと「家柄、とくに高い格の門閥」となっています。GHQ草案では、ここのところは「階級又は国籍起源」となっています。つまり、「階級や国籍によって差別されない」です。意味は明快ですね。条文の冒頭もGHQ草案では「すべての人は法の下に平等であって」という普遍的な真理をかかげていますよ。ここでも日本側は、明治憲法の精神・家父長制の精神で抵抗をします。「すべての人は」を「すべて国民は」に変え、「階級」を「社会的身分」、「国籍」を前の階級に沿うような訳語「門地」にしたというわけです。その結果、この法の下の平等は、日本国民だけに適用されるものになり、「国籍によって差別されない」が、「門地によって差別されない」に変わることによって、在留外国人には適用されないものになったのです。とくに在留外国人で最も多い人数の、敗戦まで日本人として、連合国軍に対して戦った在日朝鮮人・台湾人に適用されないことになったのです。文面上正しいが、実質的に差別する憲法となったのです。ほんとにびっくりです。

週刊朝日 2017年12月15日号より抜粋


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by daisukepro | 2017-12-16 09:11 | 憲法

日本国憲法を知ってるかい

週刊朝日

憲法改正を求める集会で安倍首相のビデオメッセージが流された=2017年5月3日(c)朝日新聞社

憲法改正を求める集会で安倍首相のビデオメッセージが流された=2017年5月3日(c)朝日新聞社

明良佐藤(あきよし・さとう)/1943年、東京生まれ。40歳で栃木県茂木町に移住。「戦後カレンダー」は朝日新聞「天声人語」でも紹介された。著書に憲法の先進性を描いた『八月十五日のうた』(随想舎)

明良佐藤(あきよし・さとう)/1943年、東京生まれ。40歳で栃木県茂木町に移住。「戦後カレンダー」は朝日新聞「天声人語」でも紹介された。著書に憲法の先進性を描いた『八月十五日のうた』(随想舎)

 改正の是非が論議されている憲法9条。その内容はいまや広く認知されているが、他の憲法をみてみると意外なことばかりだというのは、8月15日に新しい年が始まる「戦後カレンダー」を1984年からつくり続けてきた栃木県茂木町の明良(あきよし)佐藤さん(74)だ。現在の憲法は当時の日本政府がGHQ(連合国軍総司令部)から憲法案をつくるように指示されたものの、明治憲法と変わらないものを作成。そのため、GHQ側が憲法案を考案するように。それから日本政府との交渉が行なわれ、今の憲法が生まれた。しかし、専門家でない人々は何も知らないのが現実。明良さんは憲法を学ぶ必要性を指摘する。

*  *  *
 まずは三十七条二項。「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する」

 この条文をしっかり読みましたか。ほんとにびっくり! このような条文が憲法にあったのかと、私はうなりました。

 いままでたくさんの刑事ドラマを見てきましたが、このような権利を行使する被告人を見たことがありません。多くの被告人は、検察官と弁護士のやり取りの間で小さくなっているだけです。それだけ、この憲法の中身が知らされていない。教育されていないということです。

 無実で逮捕された人が、この条文を知っていれば、必死になって証人を審問し、それでも足りなければ、あらたな証人を公費で強制的に呼び寄せます。それが冤罪を防ぐのです。いま獄にいる冤罪の人は、この条文を知ったら悔しがるでしょう。


憲法では「こんな細かいことまで書くの」と思うほど、被告人の人権を細かく規定しています。その理由は、戦前の警察が天皇の官吏として、被告人を虫けらのように扱って、拷問による自白の強要などで人権侵害を大々的に行い、民主勢力を拘束して軍国主義を増大させたからです。

 GHQは民主化を徹底させるために、その歴史を踏まえ、最も人権侵害を起こした国家警察が二度と過ちを犯さないように、具体的に細かく最高法規たる憲法に規定して、どのような法律(下位法)ができようとも、人権侵害が起こらないようにしたのです。そして、日本側もそれを認めたのです。

 堂々と審問する被告人の姿を保障するこの条文は、新憲法が人権の革命をもたらした証しの一つです。

 つぎは二十四条一項。「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」

 いわゆる男女平等の条文。男女平等は当たり前。どこにもびっくりはないね、と言われそうですが、実は大ありなんです。私の体験です。

 私の名前、明良佐藤はヘンと思いませんか。欧米式のまねをしているのではありませんよ。私は旧姓小関です。この旧姓、既婚女性の方はほとんど持っていますね。男性はまったく少数、希少価値に属します。では男の私がどうして?です。結婚するとき、彼女が姓を変えたくないと言ったのです。私は、女が当然変わるものと思っていました。なぜなら、それが家父長制度の習いが根強く残る社会習慣だから、です。

 そこで困って本を読んでみたら「改姓は男女どちらかの姓を名乗る」となっている。「女が男の姓に変わる」となっていない。逆に「男が女の姓に変わってもいい」となっている。青天の霹靂(へきれき)! 法律とは保守的なもの。それがまったく逆、革命的なことを言っている! まさにびっくり。そう、ここに憲法二十四条が生きているのです。

 私は、家の跡取り息子として厳しくしつけられ、自由を束縛されたので、家父長制度に反対してきた。だから、私が改姓した。ところが困ったことに「佐藤さん」と呼ばれだし、「婿養子にいったの」とまで言われた(婿養子とは、家制度下の習い)。そこで一生変わらない親からもらった個人名・明良を通用させたいと、姓名を逆にして明良佐藤と名のった。略称は明良。すると「明良さん」と呼ばれ、通用することになる。サインは明良佐藤。

 家父長制度の習慣は、いまも根強いものがあります。その象徴が改姓。男女平等なので結婚時の改姓は、男の姓か女の姓かどちらかを選ぶ。選択の自由がある。これもGHQの強い指示があって実現した。ところが現実は、いまも96%、女性が変わっている。戦後73年目でも、この圧倒的不平等! びっくり!

 なぜ女だけが改姓を? 周りから、女が変わって当たり前、とじわりとくる。相手の家に入るという、嫁入りの意識がいまも生きている。

 これに抗するには「私は変わらない。あなたが変わって」と女性が主張を貫く力が大事。別姓が認められていれば、私もあなたも変わりたくない、だから別姓で、となる。


しかし、最高裁判決はそれを認めなかった。男の私が改姓したように、改姓には男女平等原則が生きている。男社会で男が改姓するのは周りからのプレッシャーがあるので大変だが、これは女性がいつも感じているもの。改姓しない男は、男社会の中で、のほほんとしてしまう。だからいつまでも、男社会は変わらない。

 結婚は共に苦労を分かち合うこと。改姓することの大変さを、男も体験することで、初めて男の意識も変わる。女と男の改姓の数が同等になれば、人格の象徴である名前で革命が起これば、外から革命された家父長制度はほんとうに内から革命される。戦前から戦後のいまも、ずーっと男社会であった日本の社会が変わる。

 この長い伝統を打ち破り、男女平等を実現するには、意識革命が必要なのです。

 日本国憲法は、日本の伝統にぶっといくさびを打ち込みました。意識を変えなさい。そうでないとまた悲惨な戦争を起こします。その意識を変える道筋が憲法です。人間は一人ひとりが大切です。一人ひとりが平等です。人権を大事にしなさい。それが戦争を防ぐのです、と。

 でも、なぜ、学校で憲法を教えないのでしょう。74歳の私も学ばなかった。若者も学んでいないようです。どうやら、憲法ができて70年たったいまも、学校で子どもたちに憲法を教えていない。これこそ、びっくりの最たるものですね。


 ここまで、憲法のびっくりの一部を駆け足で話しました。気づくことは、日本の保守政権のGHQ草案に対する抵抗です。いい意味の抵抗ならいいのですが、明治憲法に近づけようと画策し、その結果、内容が人権感覚からいって後退しています。残念ながらGHQ草案のほうがすぐれている。これは、GHQによって却下された松本試案の中にある明治憲法の精神で、日本側がGHQ草案に抵抗した結果です。

 この構造は安倍首相と日本会議の人たちが、戦後レジーム(戦後憲法体制)からの脱却を掲げているのと相似しています。GHQ草案が下敷きになっている個人主義に基づく日本国憲法に対して、押しつけられたから(押しつけではないことを見ましたね)と、大幅な変更を掲げる自民改憲草案は、個人より国を優先し、家族主義をかかげ、天皇を象徴から国家元首に変更し、神社神道を重視し、戦争のできるふつうの国にして、明治憲法体制の復活をねらう姿勢が見え見えです。自民党に寄り添っている支配層にとって、いまの憲法より明らかに明治憲法のほうが国民を支配しやすいからです。

 これに抗するには、学校で文部科学省が教えない以上、主権者の力を発揮して、私たち市民が憲法の学習運動を起こすことです。憲法が示している多様な人権を皆さんに知ってもらいましょう。と同時に、いままで埋もれていた戦争の惨禍を受けてできた憲法前文の世界から差別をなくす高い理想を掘り起こして、政治に理想をかかげられる希望を見たいですね。

週刊朝日 2017年12月15日号より抜粋



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by daisukepro | 2017-12-16 08:42 | 憲法