映画感想三連発+三分の一『ボーダータウンー報道されない殺人者ム』(2006年アメリカ映画

映画感想三連発+三分の一『ボーダータウンー報道されない殺人者ム』(2006年アメリカ映画)公開中(ネタバレあり、後半は観賞後にお読み下さい)

映画は傑作です。けれども、アメリカでは公開されなかった。なぜだろう。c0013092_1913391.jpgそれは、この映画が事件の本質をするどく追及しているからです。ストーリーはシカゴの女性ジャーナリストがメキシコに派遣されるところから始まります。国境の町ファーレスで発生した連続女性殺人事件の取材です。約10年の間にファーレスで500人以上の若い女性が殺害された。行方不明者をカウントすると事件数は5000件に及ぶ。しかし、犯人は逮捕されていない。映画でも実話と同じに犯人が逮捕される設定になっているが、複数いる共犯者は上がらない。事実、組織的犯罪の可能性もあるが、真相は闇の中だ。いまでも、惨殺遺体があがるという。
ファーレスの近郊にはマキラドーラ制度によって設立された外国の家電や自動車などの組立て加工工場が密集している。その工場に地方やスラム街から雇われた若い女性労働者が働いている。安い賃金、三交代制の長時間労働など劣悪な労働条件、単純な労働の繰り返しで,いくら経験を積んでもスキルアップは無い。使い捨てである。日本のトヨタの派遣労働者と状態はかわらない。ファーレスは富裕層が居住する地区とスラム街、マフィアが支配する夜の繁華街がある。現地ロケと思われる画面は緊張感がある。監督がこの地域の出なので、現地以外のロケセットでも選定にリアリティがある。権力、マスコミを追及するこの作品内容で、しかも外国で撮影許可をとるのはかなり難しい。まず、政府機関、警察の許可がいるし、場合によっては現地企業、マフィア、地主などの了解と資金が必要になる。c0013092_191529.jpg監督は朝日新聞のインタビューに「ロケバスが銃撃を受け、カメラが盗まれた。それは恐ろしいことだが、この映画が真実を撮影した証明だ。」と答えた。
ジェトロの資料を読むと、マキラドーラ制度はメキシコが国境地帯における雇用対策として1965年に制定された。アメリカの企業だけでなく、日本のメーカーも参加している。メキシコに多国籍企業を誘致する為にメキシコ政府が認定した輸出企業に対して原材料、設備、部品などを免税する制度である。その結果,この国境地帯に大手メーカーの工場が乱立したのだ。1994年アメリカと北米自由貿易協定(NAFTA)が締結され、マキラドーラによる税制優遇措置は失効したが、メキシコ政府は2000年に生産促進措置(PROSEC)を制定していまでも優遇措置は継続されて生産は続いている。
ドラマは女性ジャーナリストが真実を追究する中で行政や企業の癒着、警察権力の妨害などが描写されて事件の背景に迫って行く。みずから危険な囮になって犯人を逮捕、記事を書き上げた。しかし、期待は裏切られるのである。
事件の真相があきらかになり、事件の背後に潜む過酷な労働実態や北米自由貿易協定の仕組みが暴かれることを多国籍企業は恐れ、マフィアや警察権力をつかって隠蔽を図ろうとする。
被害者の若き女性と見えない権力と敵地でひとり立ち向かって行く。女性ジャーナリストをジェニファーロペスが迫力ある演技で見せてくれる。スタッフ、キャストの心意気に拍手を!必見の映画です。 10月18日公開。東京・日比谷のシャンテ シネなどで上映中
[PR]
by daisukepro | 2008-11-12 19:20 | 映画


<< 映画感想三連発+三分の一『ブー... 映画感想三連発+三分の一『ハリ... >>