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かみかけて歌舞伎讃歌   鶴屋南北「盟三五大切」(かみかけてさんごの大切)

かみかけて歌舞伎讃歌   鶴屋南北「盟三五大切」(かみかけてさんごの大切)をBSで

土曜日の夜はろくな番組がない。ぼんやりと新聞の番組表をながめる。と、11時30分、歌舞伎通し狂言「盟三五大切」の文字が目に飛び込んできた。
NHKBSハイビジョンだ。「鶴屋南北だから見てみるかーーー」。すでに放送は始まっていた。子供の頃は親につれられて歌舞伎を見ることがあったが、表を通ることがあっても歌舞伎をみたいとは思わなかった。演目「盟三五大切」はかみかけてさんごのたいせつと読む。去年の11月公演昼の部で上演された。かみかけて歌舞伎讃歌   鶴屋南北「盟三五大切」(かみかけてさんごの大切)_c0013092_21402375.jpg
序幕は船頭の三五郎が芸者小万をのせて川を下ってくる。実は芸者小万は三五郎の妻である。金のため三五郎が遊郭に身売りしたのである。しかし、なぜか二人は仲睦まじい。沖に向かって三五郎は人目を避けるように船を漕出して行く。舞台全面、青の世界、二人は抱き合って舟底に倒れ込むのだ。
これほど見事なエロティズムを表現した舞台を見たことがない。ドラマの大詰め、その謎が明らかになる。
劇の筋書きに無駄がなく、ユーモラスな南北流儀の人間模様をスピーディな演出で展開して行く。主役は浪人薩摩源五郎、真っ黒な衣装に白塗りのメーク、かっこ良く登場するのだ。片岡仁左衛門(片岡孝夫)が熱演している。かみかけて歌舞伎讃歌   鶴屋南北「盟三五大切」(かみかけてさんごの大切)_c0013092_21331655.jpgできるだけ鑑賞の妨げにならないように筋書きの一部を紹介することをご容赦下さい。
浪人源五郎の家屋は借金取りに畳まで取り上げられ、家財道具、何一つ残っていない。芸者小万に入れあげたからだ。さらに、小万は源五郎に身請けを迫るのだ。まくってみせた小万の腕には「五大力」と入れ墨が入っていた。仕組まれた芝居とも知らず、源五郎は高級武士と張り合って小万の身請金百両を出してしまう。百両は叔父から預かったものだ。このあたりは近松門左衛門の冥土の飛脚、内田吐夢の浪花の恋の物語が思い浮かぶ。

そして、裏切られたと知った源五郎は殺人鬼に変身、舞台は一転、凄惨な復讐劇が一気呵成に展開されるのだ。あっという間に、大詰めを迎える。まさに、これこそ鶴屋南北の世界だ。気がつけば真夜中の2時15分を過ぎていた。歌舞伎の表現形式は世界に類をみない演劇芸術として完成され、現代に引き継がれている。見事と言うしかない。源五郎は5人を斬り殺し、番傘をさして雨の中を立ち去って行くーーーー。源五郎の花道は観客に強いインパクトを与えるだろう。通し狂言こそ歌舞伎の神髄を伝えるものだ。
いま、歌舞伎座は4月公演を最後に改築されることが報道されているが、8月に延期されたという話もある。大船撮影所を裏切った松竹の経営者が歌舞伎までも裏切らないよう祈っている。
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by daisukepro | 2009-02-03 21:36 | 演劇


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