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横須賀、海賊、核の傘

横須賀、海賊、核の傘

日曜日の午後、横須賀軍港ツアーに参加した。一行は約30名、映画関連労働組合平和推進委員会の皆さんです。遊覧船は港内を45分で一周、停泊中の船舶をガイドしてくれる。1200円では安い。都心から参加すると交通費が往復2000円ほど加算される。帰りにはドブ板小路を抜けて三笠公園まで歩く。そこには戦艦三笠が保存されていて500円払うと艦内の見学ができる。ドブ板通りは観光地化して昔の面影はないが、それなりに終戦直後の占領ムードを漂わせている。横須賀、海賊、核の傘_c0013092_19504362.jpg日本人はとても買う気が起こらないような土産物を売っている店が並ぶ。私服の黒人兵や連れ立って歩く白い水兵服の海上自衛隊員とすれちがうこともある。
軍港は日米共同で使用している。一隻300億円もする自衛隊の潜水艦が係留されている。その奥にはアメリカ軍のイージス艦数隻が待機している。しかし、楽しみにしてきた原子力空母ジョージワシントンの姿はなかった。
横須賀、海賊、核の傘_c0013092_19495713.jpg
「核密約があった」という元外務次官の村田良平氏の証言を西日本新聞がスクープしたのは6月28日の朝刊。
日本政府はこれまで核密約はなかったと答弁してきた。麻生首相も「なかったというので調べるつもりはない」と記者会見で答えていた。もし、スクープが真実だとすれば、私たちが乗船した遊覧船がジョージワシントンの近くを通過すれば核兵器に最も接近した瞬間ということになる。サイトシーングも忘れがたいものに変貌するはずであった。

翌日のしんぶん赤旗をみると、不破哲三氏の談話が載っていた。大見出しでタイトル「これが核密約だ」、当時、共産党委員長だった不破氏は2000年の党首討論で密約全文を示し政府を追及した。不破さんが暴露した密約文書の表題は「相互協力及び安全保障条約討論記録」となっている。この奇妙な呼び名の条約表題がなぜ名付けられたか、米国の報告書には以下のように書かれている。「いかなる秘密取り決めの存在を否定するために日本政府の注文で討論記録と呼ぶことになった」と

今度のスクープ以後、新聞各社が歴代の外務次官を取材して証言を取っている。いずれも、密約を認め、歴代の外務大臣に手書きメモをわたして引き継ぎをしていたことが明らかになった。かくも長きにわたって政府は国民を欺いていたのである。これって、まさに二枚舌その一。
2000年に不破氏が密約を暴露した後、その翌年、田中眞紀子氏が外務大臣になったが、なぜか、この密約は報告されていない。メモが破棄されたともいわれている。

密約の仕組みと主な内容は2つある。岸首相とハーター国務長官が公式に取り交わした交換公文では「核兵器の持ち込みなど米軍の装備の重要な変更」「日本の基地を戦闘作戦行動への出撃に使うとき」(要約)は日本政府と事前協議する。となっているが密約では「核を積んだ軍艦や軍用機の立寄り、通過は、事前協議はいらない。米軍が日本から移動する場合は移動先が戦場であっても事前協議はいらない。米軍の自由である。」となっているのである。(全文参照)密約条文はマッカーサー駐日大使と藤山愛一郎外相が署名している。核の持ち込みとは「核兵器、中長距離ミサイル(短距離ミサイルは除く)のための基地の建設」と規定している。だから、米原子力空母は横須賀港に核兵器を搭載して自由に寄港していたのである。

しかし、今なぜ外務省高官が一斉に密約を認めた発言を始めたのかという素朴な疑問が浮かんでくる。元毎日新聞の池田龍夫氏によれば村田良平元外務次官は武器輸出三原則、非核三原則を批判、憲法を改正して集団的自衛権を鮮明にすることを切望している人物であるとマスコミ関連のホームページで解説している。あのテレビに出てきて「アメリカのいう通りにしていれば日本は安全です」という変なおじさん岡崎元駐米大使と同期の外務省エリートらしい。

すると、どうだろう4日提出された「安保防衛懇」の報告書を読むと北朝鮮の核開発と弾道ミサイルが脅威だとして、「専守防衛」「非核三原則」「PKO参加5原則」を見直してミサイル迎撃、敵基地攻撃の方策も必要だとして日本を「海外で戦争をする国に変える」提言を列挙しているではないか。

海上自衛隊の護衛艦2隻がソマリア沖に派遣されたのは3月、大量の武器弾薬を積載して佐世保港を出航して行った。この段階での武器使用は自衛隊法の枠内という制約があって自由に発砲することは出来ない。4月23日、海賊対処法案が可決、防衛省が必要と判断すれば恒久的に海外派兵が可能になり、武器の使用が認められる。そして、7月、恒久派兵法成立後、始めての第二次護衛艦が派遣されて行った。海外派兵は危険水域に入ったのだ。戦場はぐっと身近になった。歴史的な転換点といえる。

自衛隊の海外派兵は1991年のPKO派遣に始まり、9・11以後、派兵先と期限を限定した特別措置法で実施されてきた。アフガンへ「テロ特措法」、インド洋へ「給油法」、イラクへ「イラク特措法」
そして、今回の「海賊対処法」。海賊退治とは見せかけの衣で、この法案の中身はいつでも、どこでも自衛隊の海外派兵ができ、紛争解決の手段として武力行使ができるようにするための「海外派兵恒久法」なのだ。そして、最後の障害物である海外派兵を禁じた憲法九条第二項の改正を切望しているのだ。二枚舌のその二

デッキの上で潮風に吹かれながら考えた。
「戦争ができる社会体制が着々と構築されている。
戦争は急には起こらない。なし崩し的に戦時体制へ転換がすすんでいる。なんか変だなと気付いたときにはどうにも止まらない。アメリカ軍の指揮命令のもとに海外派兵が常識となる日が接近していることを忘れないぞ」
内閣の調査で自衛隊の海賊対策について問うと肯定的に考える人が63%なのだ。人を見かけで判断するのは用心しないとね。

二枚舌その三は麻生発言だ。8月6日、麻生首相は広島の式典で「私は改めて日本が今後も非核三原則を堅持し、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に向けて、国際社会の先頭に立っていくことをお誓い申し上げます」と事務方の用意した原稿を棒読みした。これは麻生首相に限らず、歴代首相が必ず読み上げるものだ。歴代にはない麻生首相の優れた才能は、その舌のねも乾かないうちに式典直後の記者会見で「日本はアメリカの核の傘が必要だ」と持論を展開できるこことだろう。まさに、二枚舌の朝青龍。

ガイドの声が聞こえてくる。「船の上からのカメラ、ビデオなどの撮影は・・・・・・・・自由です」
私は辺野古ではこうは行かないと思いながら、ビデオカメラを回した。

追記
ここまでの記事を投稿しようとして読売新聞の夕刊(8月7日)が置いてあったので、ちらっと見ると、核密約「確認は不能」と三段抜き記事が目に止まった。外務省はアメリカでは公開済みの文書が日本では1981年の調査で文書本体が確認できなかったので密約を否定する方針だという。引き継ぎメモは消去されたと村田氏は言っているが・・・・・・。この国の外務省はどうなっているのだろう。




相互協力及び安全保障条約討論記録
東京 1959年6月
 1、(日米安保)条約第6条の実施に関する交換公文案に言及された。その実効的内容は、次の通りである。
 「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国からおこなわれる戦闘作戦行動(前記の条約第5条の規定にもとづいておこなわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。」
 2、同交換公文は、以下の諸点を考慮に入れ、かつ了解して作成された。
 A 「装備における重要な変更」は、核兵器及び中・長距離ミサイルの日本への持ち込み(イントロダクション)並びにそれらの兵器のための基地の建設を意味するものと解釈されるが、たとえば、核物質部分をつけていない短距離ミサイルを含む非核兵器(ノン・ニュクリア・ウェポンズ)の持ち込みは、それに当たらない。
 B 「条約第5条の規定にもとづいておこなわれるものを除く戦闘作戦行動」は、日本国以外の地域にたいして日本国から起こされる戦闘作戦行動を意味するものと解される。
 C 「事前協議」は、合衆国軍隊とその装備の日本への配置、合衆国軍用機の飛来(エントリー)、合衆国艦船の日本領海や港湾への立ち入り(エントリー)に関する現行の手続きに影響を与えるものとは解されない。合衆国軍隊の日本への配置における重要な変更の場合を除く。
 D 交換公文のいかなる内容も、合衆国軍隊の部隊とその装備の日本からの移動(トランスファー)に関し、「事前協議」を必要とするとは解釈されない。
by daisukepro | 2009-08-07 20:08 | 憲法


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