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「無期転換ルール」が四月から本格的に始まる

有期雇用で働く人が、無期雇用への転換を求めることができる「無期転換ルール」が四月から本格的に始まるのを前に、企業から契約を打ち切られる「雇い止め」が多発している。労働組合などに突然職を失った人たちからの相談が相次いでおり、問題は深刻化している。 (木谷孝洋)

 「年末に突然、『次は更新しない』と言われた」

 「十二年間働いたのに、能力不足を理由に雇い止めになった」

 有期契約や派遣で働く人たちが加入する全国ユニオン(本部・東京)には昨年九~十二月、雇い止めに関する相談が三十二件寄せられ、前年同期の三倍に達した。連合にも昨年十二月、前年同期より十件近く多い百一件の相談があった。厚生労働省の調査でも増加しており、担当者は「四月に向け、さらに増える可能性がある」と話す。

 背景にある無期転換ルールは、有期雇用の労働者が通算五年を超えて契約を結ぶと、雇い主に無期雇用への転換を申し込める制度。企業側は拒否できない。雇用の安定化を目的に、二〇一二年に成立した改正労働契約法に盛り込まれた。

 パートや契約社員など有期雇用で働く人は約千五百万人に上り、うち約四百万人が五年を超える。これらの人たちの多くが、一三年四月の法施行から五年となる今年四月から無期雇用を申し込めるようになる。

 企業の多くは「パートナー社員」など新たな職種を設けて無期への転換を進めているが、駆け込み的に有期雇用者との契約を打ち切る企業もある。全国ユニオンの関口達矢事務局長は「無期の負担を嫌った企業が契約更新を拒否するケースが目立つ」と指摘する。

 「抜け道」もある。六カ月以上の契約空白期間(クーリング期間)を置けば通算の契約期間に数えない規定だ。自動車メーカー十社のうち七社は、これを利用して通算で五年を超えるのを防いでいたことが、厚労省の調査で分かっている。

 労働契約法は、雇い止めは「社会通念上相当であると認められないとき」は無効と定めているが、個別の案件は司法の判断に委ねられる。無期転換ルールは違反しても罰則がなく、行政は制度の周知や啓発しかできないのが実態だ。

◆使い捨て発想 脱却の時

<解説> 「無期転換ルール」は、有期契約で働く人の雇用の安定に生かすのが本来の目的だ。趣旨に反して、企業が駆け込み的に雇い止めをすることは許されない。

 無期転換は働く人だけでなく、企業にとってもメリットはある。有効求人倍率は一・五六倍と四十三年ぶりの高水準となり、労働市場は人手不足といわれる。雇用を有期から無期にすれば、企業は人材確保の見通しが立てやすくなり、社員の能力向上にもつながる。無期契約を負担ととらえるのではなく、人事や業務のあり方を考え直す契機にすべきだ。

 パートやアルバイトなどの有期労働者は、雇用の調整弁の役割を果たしてきた。だが、契約更新を繰り返し、事実上、無期雇用と同じように働く人も少なくない。経営者は、短期間で使い捨てるような発想から脱却する時期に来ている。クーリング期間規定の廃止や、違反した場合の罰則の新設も検討する必要があるだろう。 (木谷孝洋)

<無期転換ルール> 有期雇用の労働者が通算5年を超えて契約を結ぶと、企業に無期雇用への転換を申し込める制度。1年契約は6年目に、2年や3年契約の場合は5年を超えることが確定した時点で申し込みの権利が発生する。企業は拒否できない。改正労働契約法には「無期と有期の待遇に不合理な格差を設けてはならない」とも明記した。

(東京新聞)



by daisukepro | 2018-01-19 12:54 | 労働運動


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