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はなし塚

はなし塚

昭和6年は、皆さまご承知のように、日本の内外の情勢は一段と厳しく、日華事変以来、我が国は臨戦体制から戦時体制に突入しており、国家総動員法も公布され、国民も一億一心すべて東亜新秩序のため、身を挺して重大時局に直面している時でありました。政府からは各芸能団体の演題種目について、厳しく自粛が叫ばれていました。

本法寺のはなし塚写真(本法寺境内内)

演芸のなかでも落語は、江戸時代の最盛期にはじまった演芸であり、その演題のなかには、遊里・酒・妾・廓噺などの名作も少なくなかったが、この厳しい戦時中にこうした演題をだすことが憚(はばか)られ落語界では、国策に沿っていち早く自粛方を協議し、野村無名庵(講談落語協会顧問)を先導に、演題について落語界幹部が種々検討して、甲・乙・丙・丁に分類、丁に属する戦時下の時局に相応しくない噺五十三種(遊里・酒・妾・廓話等)を禁演落語として発表し自粛の姿勢しました。

この禁演落語の中には、江戸文芸の名作といわれた、明烏・五人廻し・木乃伊取りがあり、高座から聞くことができなくなりました。落語界の芸人のなかには、この禁演となった五十三種の噺を得意にしている人もあったが、誠に残念であるが重大時局に直面し国民が滅死奉公に身を挺している時であり、当然の結果といえるかも知れません。昭和16年10月31日、当時の講談落語協会、小咽を作る会、落語家講談家一同、落語常席主が発起人となり、落語界の人々の信仰を集めていた熊谷稲荷のある、本法寺の境内に「はなし塚」を建立し、時局に相応しくない53種の台本をこの塚に納め、併せて落語界の先輩の霊を弔いました。

はなし塚の石碑の表面は長井金升氏が揮はくし、裏面には次のようにもその由来と発起人の方々が刻まれています。

昨秋9月東京落語家全員は、園家新体制に即応し53種の落語禁演を自粛協定して職域奉公の実を興げたり、今是を紀念し併せて葬られたる名作を弔ひ尚古今小噺等過去文芸を供養する為詳細記録類を埋めて建碑し以て菩提に資すと再云。
  南無妙法蓮華経      紀元二六〇一年 花四月   昭和十六年巳
  講談落語協會落語部員一同  東京色物演藝場席主一同
  小咄を作る會員有志一同


納められた53種の演題

1  明烏
2  粟餅
3  磯の鮑
4  居残り佐平次
5  お茶汲み
6  お見立て
7  親子茶屋
8  首ったけ
9  廓大学
10 五人廻し
11 子別れ
12 三助の遊び
13 三人片輪
14 三人息子
15 三枚起請
16 品川心中
17 お祓い
18 高尾
19 辰巳の辻占
20 付き馬
21 突落し
22 搗屋無間
23 つるつる
24 とんちき
25 二階ぞめき
26 錦の袈裟(けさ)
27 にせきん
28 白銅
29 ひねりや
30 文違い
31 坊主の遊び
32 万歳の遊び
33 木乃伊取り
34 山崎屋
35 よかちょろ
36 六尺棒
37 権助提灯
38 一つ穴
39 星野屋
40 悋気の独楽(りんき)
41 城木屋
42 引越の夢
43 包丁
44 氏子中
45 紙入
46 駒
47 葛の間男
48 蛙茶番
49 疝気の虫(せんき)
50 不動坊
51 宮戸川
52 目薬
53 後生鰻(ごしょううなぎ)

発起人の方々ご氏名

六代目  一龍齋 貞山
八世    桂    文治
四代目  柳家   小さん
六世    桂    文楽
六代目  古今亭志ん生
二代目  三遊亭 円歌
六代目  三遊亭 円生
五代目  蝶花樓 馬楽
初代    桂    小南
六代目  柳亭  芝楽
四代目  立川  談志
五代目  三遊亭 金馬
三代目  三遊亭 円遊
初代    柳家 金語樓
四代目  春風亭 柳橋
五代目  柳亭   左楽
初代    桂   小文治
七代目  林家   小蔵
初代    春風亭 柳好
二代目  三升   紋彌
三代目  昔々亭 桃太郎
六代目  古今亭 今輔
六代目  春風亭 小柳枝
六代目  三笑亭 可楽
二代目  大島   伯鶴
初代    神田   山陽
四代目  小金井 蘆州
五代目  神田   伯龍
八代目  入船亭 扇橋
四谷    喜よし
新宿    末廣亭
上野    鈴本亭
東寶名人会  林 暁 紅
落語研究會  今村 信雄
題字揮毫    長井 金升
建設委員   野村無名庵
仝        鈴木凸太
石工      南澤仙吉五代目  蝶花樓 馬楽
初代    桂    小南
六代目  柳亭  芝楽
四代目  立川  談志
五代目  三遊亭 金馬
三代目  三遊亭 円遊
初代    柳家 金語樓
四代目  春風亭 柳橋
五代目  柳亭   左楽
初代    桂   小文治
七代目  林家   小蔵
初代    春風亭 柳好
二代目  三升   紋彌
三代目  昔々亭 桃太郎
六代目  古今亭 今輔
六代目  春風亭 小柳枝
六代目  三笑亭 可楽
二代目  大島   伯鶴
初代    神田   山陽
四代目  小金井 蘆州
五代目  神田   伯龍
八代目  入船亭 扇橋
四谷    喜よし
新宿    末廣亭
上野    鈴本亭
東寶名人会 林 暁 紅
落語研究會 今村 信雄
題字揮毫   長井 金升
建設委員   野村無名庵
仝        鈴木凸太
石工      南澤仙吉




by daisukepro | 2018-07-03 05:41 | 文化


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