戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員) 栃木女児殺害事件と一木弁護士 18/08/04 明日へのうたより転載

戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

栃木女児殺害事件と一木弁護士 18/08/04

明日へのうたより転載

 「栃木女児殺害2審も無期」「『録画で認定1審違法』東京高裁」(4日付『毎日』1面)「無期判決弁護団『不当』」「手紙の評価疑問視」(同第2社会面)。05年12月に発生した事件。捜査が難航し、懸賞金つきで情報提供を呼びかける。9年後の14年6月に「犯人」逮捕。取り調べでは犯行を自白したが、裁判では無罪を主張。宇都宮地裁の一審で無期懲役。今回東京高裁でも判決は踏襲された。

 足利事件で再審無罪になった菅谷利和さん、布川事件の桜井昌司さんも「この事件は冤罪なんですよ。なんでこんなことが繰り返されるのか」と怒っている。おれも冤罪だと思う。状況証拠だけで無期懲役なんて酷すぎる。それはそれとしておれがこのブログで書きたいのは、関連はするが別の話だ。

 この判決を報じた『毎日』記事に「判決後、記者会見する」弁護団の写真が載っている。なんか見覚えのある顔だ。主任弁護人の一木明弁護士。そうだあの一木先生ではないか。1983年だからもう35年前になる。栃木県の地方紙『下野新聞』争議で最初から最後までお世話になった。

 下野新聞は毎日新聞の系列、経営者が毎日から派遣される。中には点数稼ぎにあくどいことをする奴がいて、賃金をけちるために組合を弾圧した。協約破棄に端を発し、団交拒否、組合幹部配転と攻撃を強めてとうとう労働争議になった。当時おれは新聞労連法対部長で争議指導の責任者だった。

 組合は一連の攻撃を不当労働行為だとして栃木県労働委員会に申し立てた。その組合側代理人を引き受けてくれたのが一木明弁護士。当時まだ独身で真面目一辺倒、ち密な法廷戦術を立てて組合側にいい加減な対応を許さない。一方酒は嫌いな方ではなく、対策会議が終わると宇都宮の繁華街によく飲みに出かけた。打ち合わせのため上京すると新聞労連書記局のある水道橋界隈でも一緒に飲んだ。

 下野新聞争議は2年間たたかって、配転撤回、協約復活、会社陳謝などを盛り込んだ労働委員会の和解が成立し完全勝利した。毎日本体から送り込まれた労務屋は更迭され、組合幹部は全員元の職場に戻った。市内のホテルで開かれた闘争勝利パーティで一木先生は最高の笑顔を見せていた。

 あれから35年、新聞で見る一木弁護士は髪に白いものが目立ち、顔だちも年相応に変わっている。しかし眼鏡の奥の鋭いまなざし、正義を主張する厳しい表情は昔と変わらない。最高裁での逆転を陰ながら応援したい。



検事「女の子に声を掛けて、何がしたかった」

 被告「ふー、ふー。これは後で」

 《場面が切り替わる》

 検事「アパートに行くまで何をしゃべった。(被告は無言)どこに行くか聞かれたか」

 被告「した。ふー、ふー。病院」

 検事「何で病院と言った。母親が大変で病院ということにしたのか」

 被告「うん」

 検事「女の子は君の事を信じていたか」

 被告「分からない」

 《場面が切り替わる》

 検事「車をどこに止めた」

 被告「アパート」

 検事「(女の子が)『病院じゃないじゃん』とか言わなかったか」

 被告「分かんない」

 検事「部屋に入った?(被告がうなずく)どうやって部屋に連れていった」

 被告「はー、ふー。(顔を手で覆う)途中の詳細は後でお願いします」

 検事「お姉さんに言ったら詳細をしゃべるんだな」

 被告「うん。早く、言って、本当に早く言いたい」

 検事「やってないということはないんだな。一言でいい」

 被告「はー、ふー。それも後にして」

 検事「そこも駄目なの。火曜は殺したって言っていたじゃん」

 被告「本当に覚えていない」

 検事「刺した包丁はどこ」

 被告「やま」

 検事「山? どこの山」

 被告「はーはー。あー、これも後でお願いします」

 検事「何で言えない」

 被告「重い、重い」

 検事「帰る時に車の中から捨てた? 山に」

 被告「うん、うん」

 検事「帰るってどこから」

 被告「あー、あー、茨城」

 検事「茨城の山に女の子の遺体を捨ててからか」

 被告「帰り道に…」

 検事「帰り道。女の子を捨てた場所とナイフを捨てた場所は近いか」

 被告「分かんない。帰り道に迷子になったから」

 《2月25日の取り調べ》

 検事「新しい気持ちで話してな。吉田有希ちゃんを殺したよね?」(被告は深呼吸を繰り返す)

 被告「昨日、姉と話せていろいろと心のつかえが取れて…。(深呼吸)それでその後すぐ弁護士が会いに来た。やっと弁護士にちゃんと話せた感じだった」

 検事「君さ、被害者のこと考えてる?(被告がうなずく)自分のことと被害者とどっちが大事だ」(被告は無言。このようなやり取りが続く)

 検事「遺族も君に一番話してほしいんだよ」

 被告「はい」

 検事「不利益におとしめようとか、そんなことないの。今、話してほしいわけよ。ずっと話さないつもりか。まぁ、いつまでも悪夢を見続けろって話だけど」

 被告「あぁー…」

 検事「いつまでも遺族とかいろんな人間に恨まれ続けて生きていけばいいよ」

 被告「もう無理、もう無理、もう無理ーっ」(何回も叫ぶ。泣き叫んで腰縄で結ばれた椅子ごと立ち上がり、検事の後ろの窓に突進。取り押さえられる。画面から消えても3分ほど泣き声が続いた)

 《2月27日の取り調べ》

 検事「今日も吉田有希ちゃんの事件について聴きますから。黙秘権はあります。任意の取り調べで録音・録画してます。こないだ火曜夜は…(25日に突然、窓に突進したことについて)」

 被告「すいません」

 検事「どうしたんだ。(被告の答え、聞き取れず)別にいいよ。つらかったんだろ」

 被告「うん」

 検事「どんな気分になっちゃったの」

 被告「飛び降りたら楽だなあって」

 検事「自殺しようとしたの。(被告は首かしげる)この間、姉と会ったら話すって言っていたのに、火曜は言わないって…。信じてたのに。葛藤もあってパニクったんじゃないの。(被告は首かしげ、うなずく)何で後ろじゃなくて窓に…」

 被告「何か(後ろに)壁があったから」

 《場面が切り替わる》

 検事「逃げたい自分がいるのか。(被告は何度も首かしげ)あれか、黙っていれば処罰されないんじゃないかみたいな一筋の希望を見出したのか」

 被告「弁護士…。弁護士と話せば話しているほど言えなくなってきて…」

 検事「自分どうなるか怖くなっちゃったの。それはみんな怖いんだよ。でも段階を踏むわけ。凶悪犯罪した人も被害者や遺族を思って話してるわけよ。話さない人もいるけどさ」

 被告「話さない…、ずっと話さないつもりはない。自分でも耐えられないと思っている。ずっと話さないのは無理」

 検事「じゃあ、今話せばって言ったら、こないだ、お姉ちゃんと会った後って言ってたけど」

 被告「姉と話した後、弁護士が来た。それで弁護士にはちゃんと話せるようになったんだよね。話し始めたらもうどんどん姉と会った直後に全部飛んじゃって…」

 検事「先週はさ、しゃべっていたじゃない。しゃべっていたところ録音・録画してたし、君は真っ白で覚えてないって言うけど、調書もあるんだよ。それ以外にも君が犯人と思う証拠あるんだけど。今さらしゃべんなくなっちゃうのはみっともないと思うの」

 被告「いくら刑事に言われて、いくら思い出そうしても全然…」

 検事「覚えてないの。パニクった?」

 被告「いや、もう、どうしたのか全然覚えてない。思い出すように何回も言われたけど…」


 
 


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by daisukepro | 2018-08-10 20:57 | 冤罪


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