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<熟読 中国の歴史教科書>(中)国防建設 原爆実験成功に高揚感

人民解放軍が兵器のハイテク化を進めていた1999年7月、空軍基地で飛行実験準備中の新型ミサイル=新華社・共同

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 アヘン戦争(一八四〇~四二年)以来、一世紀にわたって国土を踏みにじられた経験を持つ中国にとって、国土防衛は常に最優先課題と言える。国防建設は「鋼鉄の長城」を築き上げることであり、教科書が教える国防の歴史に後ろめたさはない。一九六四年十月、中国は初めて原爆実験に成功する。時あたかも東京五輪の開催中だ。

 六四年十月十六日、稲光、ごう音とともに巨大なきのこ雲が立ち上った。わが国初の原爆実験の成功を告げたのである。

 六六年、核弾頭搭載の地対地ミサイルの実験に成功し、実戦に使用できるミサイルを保有した。六七年には水爆実験にも成功した。毛沢東(もうたくとう)は五〇年代、「われわれも人工衛星をつくらなければならない」と号令した。宇宙技術はゼロから出発し、七〇年に初めて人工衛星の発射に成功した。

 「両弾一星(原爆、水爆、人工衛星)」の成功は、大きな困難を克服してつかみ取った偉大な成果であり、中国人民の士気を最大限に鼓舞し、民族の精神を奮い起こした。それは当時の核大国による核の独占を打ち破り、わが国の国際的な地位を大いに高めた。

中国の歴史教科書で、1964年10月の原爆実験成功を説明するページ=浅井正智撮影

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 当時、中国は米国との対立に加え、ソ連とも関係が悪化。核武装は「世界戦争は不可避」という毛沢東の対外認識を基に、全面戦争に備えたものだが、教科書にはそのような切迫した情勢の記載はなく、高揚感が前面に出ている。

 七八年に改革開放政策の導入を決定した中国は、経済建設に力を入れていく。米ソとの緊張緩和もあり、八〇年代半ばには百万人の兵力削減に着手する一方、国防費は八九年から毎年、前年比二桁の伸びを記録。兵器のハイテク化も進められた。

 改革開放とともに、軍はビジネスにも手を染め、金もうけ主義や腐敗も横行する。二〇一二年に中国共産党総書記に就いた習近平(しゅうきんぺい)氏は、「勝てる軍隊」づくりに不安を持ち、人民解放軍への統制を強めた。

 強国強軍という時代の要求に応えるべく、国防建設は絶えず前進している。一四年、福建省古田で全軍政治工作会議が開かれ、軍隊への政治工作を通じ、強軍をつくる目標のためには強力な政治的保証を与えるべきことを強調した。

 やや分かりにくいが、全軍政治工作会議とは解放軍の政治方針を協議する重要会議で、「強力な政治的保証を与える」とは、党の軍隊に対する絶対的な指導の堅持を意味する。教科書にはこの後、習氏が断行した軍改革の内容が登場する。

 一六年には人民解放軍は五大戦区を設置。軍種は陸軍、海軍、空軍、ロケット軍、戦略支援部隊の五つに再編された。中央軍事委員会が総監督し、戦区が指揮、軍種が軍備建設を主管し、軍隊の組織と体系は革命的に一新された。国防、軍隊の現代化建設は大きな成果を挙げた。

 米国を参考にした軍改革は、軍管区の再編成とともに、陸軍偏重主義を改め、陸海空軍の統合運用を目指しており、新中国の歴史で最大の軍改革と言われる。

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 教科書では、昨年の解放軍建軍九十年の式典で部隊を閲兵する習氏の写真も掲載。その下で「これまでの閲兵式で現れた軍事装備の写真を集めて説明を加え、クラスで展示し、軍事装備の進歩を示しなさい」と生徒に課題を与えている。 (上海・浅井正智)

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by daisukepro | 2018-12-04 06:52 | 中国情勢


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