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レマルクの「西部戦線異状なし」とタックマンの「8月の砲声」

きょうの潮流

 第1次世界大戦は、兵器の戦争ともいわれました。新兵器が次々に投入され、命が大量消費されました。その様子はレマルクの『西部戦線異状なし』にも描かれています▼小説にも出てきますが、わずかな距離で対峙(たいじ)する敵との陣地戦で威力を発揮したのが手榴(しゅりゅう)弾でした。事典には、この戦争で初めてドイツ軍が大量に使って以来、塹壕(ざんごう)戦での主要武器の一つになったと書かれていました▼時をこえて、その手榴弾がよみがえりました。なんと、香港にあるカルビー子会社の工場から。ポテトチップスの材料にするため、フランスから輸入したジャガイモの中に紛れていました。安全装置が外されたままの不発弾で不安定な状態だったといいます▼独仏が激戦をくり返した戦地が後に畑となり、偶然「収穫」されたのかもしれません。香港警察が処理した映像を見ましたが、爆発力は相当なもの。何はともあれ、運搬中や工場で何事もなかったことが幸いでした▼1世紀の時を経ながら、なお殺傷する能力をもつ兵器。いま安倍政権による米国言いなりの浪費的爆買いが批判されていますが、争いではなく話し合いで解決する世界になれば遺物となるものにいつまでしがみつくのか▼「何十万という人間が10メートル前進しようとして殺される。あまりにも悲惨な戦争に尊厳と意義など見いだせるものではない」。同じ第1次世界大戦を描いてピュリツァー賞に輝いた『八月の砲声』の一節です。希望を求めた戦争の終わりにあったのは、幻滅だけだったと。






by daisukepro | 2019-02-07 04:32 | 潮流(赤旗)


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