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石炭火力、国際援助継続へ 政府、COP25で批判の中

 【マドリード=共同】地球温暖化対策に逆行するとして批判が強い発展途上国の石炭火力発電所建設に対する国際援助を、日本政府が今後も続ける方針であることが政府関係者の話で分かった。スペイン・マドリードでの気候変動枠組み条約第二十五回締約国会議(COP25)では、石炭火力の廃止を求める声が高まっており、日本の公的援助にはさらに厳しい目が向けられそうだ。

 政府はインフラ関連の輸出促進のためにまとめた「インフラシステム輸出戦略」で「石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、要請があった場合は原則、世界最新鋭の発電設備について導入を支援する」と、条件付きながらも石炭支援の実施を明記している。

 COP25では、グテレス国連事務総長が二〇二〇年以降の石炭火力発電所の新設中止を各国に求め、十一日に予定される小泉進次郎環境相の演説でも日本の方針転換が期待されていた。

 だが政府関係者は「エネルギー需要が急増するアジアの途上国を中心に石炭火力のニーズがある。現状で輸出戦略を見直す状況にはない」として支援継続を明言した。

 国際協力機構(JICA)は今年六月、バングラデシュの石炭火力発電事業に対する千四百三十一億円余りを限度とする円借款貸し付け契約を同国と調印した。国際協力銀行(JBIC)も四月、ベトナムの石炭火力建設事業に、十一億九千九百万ドル(約千三百億円)を限度とする融資を決定。政府出資の日本貿易保険が、この事業の融資保険を引き受けるなど、公的資金による海外の石炭火力建設支援が相次いでいる。

 JICAは「これまでも(輸出戦略など)政府の方針に沿う形で援助をしてきた。今後も同じだ」とコメント。JBICも融資を続ける方針だ。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化の被害を最小限にするため、電力供給に占める再生可能エネルギーの割合を五〇年に70~85%にして、石炭火力発電はほぼゼロにする必要があると指摘。再生エネルギーは価格低下が進み、先進国でも途上国でも導入が拡大している。

◆JICA売り込み 「日本の石炭火力、キレイで優しい」

 【マドリード=共同】「キレイで優しい」日本の石炭火力発電-。昨年一月、JICA九州国際センターはこんなタイトルで、海外の行政官や技術者が研修に訪れるとのプレスリリースを発表。「世界中の石炭火力発電所を日本のものに置き換えた場合、二酸化炭素の排出量を大幅に削減できる」とアピールしたが、環境保護団体からは批判が上がる。

 JICAは「日本の効率的な発電技術や管理技術の習得が研修の目的で、売り込んでいるわけではない」と説明する。だがリリースは「自国への技術・設備の導入を検討し、帰国後に所属機関に提案することが目的」と明記。環境団体は「明らかに石炭火力発電を売り込む意図だ」と指摘する。

 国際環境保護団体が昨年二月に発表した調査結果によると、二〇一七年、二十カ国・地域(G20)の海外石炭関連事業への支援は少なくとも百三十億ドル(約一兆四千億円)に上り、過去五年間で最高。機関別の支援額は中国輸出入銀行がトップで、二位が国際協力銀行(JBIC)、三位が日本貿易保険だった。

 欧州復興開発銀行、世界銀行、フランス政府などが石炭火力発電所建設への対外支援中止を打ち出し、英国も原則として援助を行わないことを決めた。日本の経済界にも発展途上国支援の中止を求める声が出る。

 今年六月にまとめられた国の地球温暖化対策の長期戦略に関する議論でも、海外援助中止を明記すべきだとの意見があったが、最終的には見送られ「依存度を低減する」との表現にとどまった。



by daisukepro | 2019-12-10 14:04 | 地球温暖化


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