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メキシコ映画「イノセントボイス(12歳の戦場)」

メキシコ映画「イノセントボイス(12歳の戦場)」
エルサルバドル内戦は軍事政権と反政府ゲリラとの間で1980年から12年間続いた。国連は児童に関する権利条約を何回も繰り返し制定して禁じているにも関わらず、少年兵はおよそ20万人が存在する。
映画の主題歌になったフォークソング「ダンボールの家」を聞いて、少年の頃の実体験をもとにオスカー・トレスが脚本を書いた。メキシコ映画「イノセントボイス(12歳の戦場)」_c0013092_3412894.jpg
ある日、政府軍の武装した兵士が、小学校を取り囲む。全校生徒を校庭に並ばせ、少年たちの名を呼び上げる。強制連行だ。少年たちの恐怖が伝わってくる。夜間は外出禁止、政府軍と反政府ゲリラとの闘いは全土に広がり、昼夜を問わず、至る所で銃撃戦が展開される。財力、体力のあるものは国外に脱出することが出来るが、貧しき者、老人、子ども、身障者、女性は生活の場から逃げ出すことは不可能だ。主役の少年チャバは11歳、彼の父は家族を残してアメリカへ脱出した。母とチャバは妹たちを守り、内乱を生き抜かなければならない。当時の国連条約は15歳以上に規制はない。その年齢に達すれば、政府軍に徴兵される。政府軍の兵士になればゲリラ戦に参加している父を射殺するかもしれない。それがいやなら、身を隠すか、亡命するか、反政府ゲリラに志願するしかない。どちらが優勢か、戦況はわからない。しかし、次第にチャバの家族にも戦闘の厳しさが押し寄せてくる。政府軍を支援するために米兵がチャバの村にも進駐してくる。ゲリラ掃討作戦は日増しに激しくなってくる。焼き討ち、ゲリラの処刑———ベトナム、アフガニスタン、で繰り広げられた残虐行為と同じ、イラク、レバノンではいまも住民を巻き込んで地獄の日々が続いている。戦争は勝つか、負けるか、勝つためには何でもやり、利用する。人命の軽視はやがて少年たちの命をも戦争に勝つために捧げよと迫る。それは、かつての日本軍の姿そのものである。米兵を見つめる住民の目は憎悪に光っている。
7万5000人の戦死者をだし、12年の後、ゲリラと政府間で平和協定が成立して、ようやく内戦は終止符を打つ。国連の平和維持活動の成功例としているが、どうだろう。映画「サルバドル」を見る限り、そうは思えないのだが、
映画「イノセントボイス」は母と子の愛情で結ばれた深い絆で、戦場を生き抜くドラマを悲しくも力強く歌い上げている。主題歌「ダンボールの家」が闘った民衆の心を歌っている。アメリカが支援した政府軍はこの歌を禁止した。「信じられないが、奴らにや、犬にも学校があるそうだ。犬には新聞紙を噛むなと教えている。だけど、奴らは俺たちに噛み付いている」
どこかで、上映している映画館があったらぜひ見てください。
監督 : ルイス・マンドーキ
by daisukepro | 2006-08-25 03:42 | 映画


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