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マイケルムーア監督の新作映画「シッコ」

映画「シッコ」
できるだけ多くの日本人にみてほしい映画だ。というのも、アメリカが風邪をひけば、日本は肺炎になるからだ。マイケルムーア監督の手法も安定してみやすい。作家の問題意識が、流行ことばでいえば、視点がぶれない。「いまのアメリカ、あしたの日本」観光ツアー客にはおてごろのガイドブックといえる。「ひどいもんだ、アメリカ人でなくてよかった」と思うが、「こりゃ、あしたのおれじゃないか」とすぐに気付くから、笑ってばかりはいられない。マイケルムーア監督の新作映画「シッコ」_c0013092_2029160.jpg
モチーフはアメリカの医療制度の惨状である。誰がこの医療制度を提案し、誰が利益を受け、そのおこぼれを誰がいただいたか、そして、犠牲者はだれかという真実を映画は明らかにしてくれる。映画はアメリカの医療制度だけでなく
お隣の国、カナダ、それからキューバ、イギリス、フランスの医療が紹介される。薬局や医師たちの振る舞いから、それぞれの国の診療の様子がわかり、医療にかかわる政治の姿勢があぶり出される。どえらい違い、天国と地獄だ。撮影のためムーア監督に同行したアメリカの患者の一人が薬の価格がアメリカとあまりに違うので、「どうして、あたしがこんな目にあわなきゃならないの」と悔し泣きする一幕もある。
アメリカと価値観を共有するということは、アメリカのようになりたいということなのだが、この映画をみた後、日本人はまだそう思うだろうか。
「畜生、これから立ちなおりたいと思ったやさきに(生活保護給付を)切りやがった。おにぎり食いたい」と北九州で餓死した人がいる。後期高齢者医療制度は75才以上の高齢者を切り捨てる制度、障害者自立支援法は障害者の支援を打ち切る制度のことなのだ。人が生まれてきたかぎり、死ぬまで生きる。誰だって、殺されたくはない。年寄り、障害者など戦争には何の役に立もたない。戦後レジームから脱却して、出来上がる社会の仕組みは、「年金生活者や病人、障害者などは棄てちまえ、貧乏な若者はアメリカの戦場に送って英霊にしてしまえ」というレジームだ。あしたの日本どころか構造改革という名の悲劇の幕はすでに開いている。(一部ネタバレご容赦、作品の性格上、鑑賞には支障はありません)
by daisukepro | 2007-08-29 20:29 | 映画


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